2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K23361
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼舘 直樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (20850100)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | エアロゾル / 気液界面 / 光化学反応 / OHラジカル / レーザー誘起蛍光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、液体ノナン酸の光化学反応にて生成されるOHラジカルをレーザー誘起蛍光(LIF)法にて直接検出することである。近年、地球上に普遍的に存在するノナン酸などの脂肪酸が気体と液体の境界(気液界面)に存在する場合に、太陽光を吸収してOHラジカルを生成することが示唆されており、対流圏における新たなOHラジカル生成過程として大気化学分野にて注目されている。しかし、「本当にOHラジカルが生成されるのか」は実験的に検証がなされていなかった。 2020年度に液体界面用のレーザー実験装置を新たに立ち上げ、液体ノナン酸の213 nm光反応により生成されたOHラジカルをLIF法にて直接検出することに成功した。また、光反応用レーザーとOHラジカル検出用レーザーの照射タイミング依存性とOHラジカル検出位置依存性を測定することで、検出されたOHラジカルが気体ノナン酸由来ではなく、液体ノナン酸の界面より脱離したものであることを確認した。 2021年度にはレーザー単発計測によるLIF信号測定に成功した。これにより、ノナン酸分子の光反応生成物が二次的にOHラジカルを放出しているのではなく、ノナン酸分子の光分解によりOHラジカルが生成されていることを確認した。また、光吸収断面積とOHラジカル生成の量子収率が既知の気相酢酸の光反応と比較することで、液体ノナン酸の光分解におけるOHラジカル生成効率の見積もりを行った。その結果、液体ノナン酸の光反応におけるOHラジカル生成効率は気相酢酸の数パーセント程度と極めて低いことが判明した。 今後は、より精度・感度の高い定量測定法を確立し、太陽紫外線領域(295-330 nm)におけるOHラジカル生成効率測定を行う予定である。
|