2020 Fiscal Year Research-status Report
単一粒子分光分析によるNO2ガスと大気中微粒子の不均一反応速度の定量化
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20K23363
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
玄 大雄 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (50774535)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 不均一反応 / エアロゾル / NO2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者が独自に開発したラマン分光法と反応セルを組み合わせた手法「単一粒子分光分析」を構築した。NO2とPM2.5の不均一反応速度を定量、得られる反応速度を数式化、大気化学モデルに実装可能な基礎データを取得し、NO2の不均一反応プロセスの解明を目的とした。 (1)単一粒子分光分析法の構築では、反応セルの作製、現有の顕微ラマン分光装置との結合、反応セル中の相対湿度の自動制御システムの構築を行なった。これらにより、PM2.5の大気中での寿命に匹敵する長時間の反応実験、および単一粒子をその場観察しながら反応中の化学組成変化をリアルタイムかつ大気圧下で定量することを可能にした。さらに、現在は、長時間の反応実験を無人で行うため、ラマン分光測定の自動化を進めている。 (2)NO2の不均一反応実験 大気中に存在するNaCl, NH4Cl, Na2SO4, (NH4)2SO4, H2C2O4, (NH4)2C2O4, Na2C2O4の粒子を調整し、様々な相対湿度(50~90%)でのNO2(数ppmレベル)との不均一反応速度の定量を行った。その反応速度定数は、モデル粒子の化学組成に関わらず、相対湿度に正の相関があった。これは、NO2の不均一反応速度定数と相対湿度との関係が単純な関数で記述でき、大気化学モデルへの実装を単純化できることを示している。 (3)大気化学モデルへの実装 現在、得られた実験結果をもとに、共同研究者との定期的な遠隔会議を行い、大気化学モデルへの実装の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、単一分光分析法を構築し、単一粒子をその場観察しながら反応中の化学組成変化をリアルタイムかつ大気圧下で定量することを可能にした。 当初の計画通り、大気中に存在する主成分を含んだモデル粒子を用いて、様々な相対湿度条件下でNO2との不均一反応速度を定量した。その反応速度定数は、モデル粒子の化学組成に関わらず、相対湿度に正の相関があり、NO2の不均一反応速度定数と相対湿度との関係が単純な関数で記述できることを示している。これらの結果をまとめ、学術論文を執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から、NO2の不均一反応速度は化学組成に強く依存せず、相対湿度と正の相関があることを確認した。今後は大気化学プロセスにおいて重要因子である、PM2.5の酸性度をパラメータとしてより総合的なNO2の不均一反応プロセスの理解を進める。相対湿度、酸性度を変数としたNO2の不均一反応速度を数式化し、共同研究を通して大気化学モデルによる新たなNO2の不均一反応系を評価する。
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Causes of Carryover |
現在使用しているラマン分光装置の感度が弱くなってきており、また反応セルとの組込みの際に物理的に反応セルと対物レンズ、反応セル周辺のスペースが十分に取れない問題がある。これらの問題により、精度の高い実験条件の制御が困難となっている。そのため、反応セルとの結合を最適化するために、周辺スペースが十分に取れるラマン分光装置が必要である。従って、当該年度の研究費を次年度へ持ち越し、次年度に新たにラマン分光装置を購入する予定である。
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