2022 Fiscal Year Research-status Report
生体脳情報処理における単一神経細胞の樹状突起・スパイン信号処理の機構と役割の解明
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20K23378
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 達雄 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90830993)
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Project Period (FY) |
2022-02-18 – 2025-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 樹状突起 / スパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は複雑な計算を行うことができる。皮質計算の基本情報処理単位は単一細胞にあると考えられてきた。しかしながら、脳切片などの単離脳標本においては皮質単一細胞の細胞内コンパートメントにも精巧かつ非線形な演算機能が備わることが示されてきた。もし、細胞内コンパートメント自体が情報処理単位ならば、私たちの脳の捉え方が大きく変わる。本研究では、マウスの個体脳において、単一細胞の視覚情報処理計算に着目し、細胞内コンパートメント演算の役割を明らかにする。このことは、大脳皮質の基本情報処理単位の概念を問い直すことに繋がる。 初年度では、マウス大脳皮質視覚野の非線形な視覚情報処理に着目し、樹状突起の非線形演算が関わるかを問う研究を行ってきた。研究室独自の技術「機能的狙い撃ちDNA電気穿孔法」を用いて、非線形な視覚情報処理を行う単一細胞にカルシウム感受性蛍光タンパクを発現させ、細胞体と樹状突起の活動を二光子測光を行った。樹状突起の活動は細胞体の活動とは必ずも一致しないことが明らかになった。 では、樹状突起の活動を操作すれば、最終的な出力である細胞体の活動はどうなるであろうか?このことを検証するために、個体脳の単一細胞において、細胞体・樹状突起の活動を別々に光遺伝学的もしくは薬理的に操作する独自の手法を開発した。このことにより、樹状突起演算がより詳細に明らかになると同時に、樹状突起演算の因果的役割も明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鹿児島大学には2022年4月に着任したが、二光子顕微鏡を設置できる部屋が2023年2月まで完成しなかったため、前所属先に学生を残し実験を行わせ研究を進めてきた。部屋の完成にあわせて2月末に二光子顕微鏡とレーザーを梱包したが、前所属先の大学内事務手続きが長引き、まだ発送ができず実験が止まっている。その間、解析を集中的に行っている。機器が到着次第、実験を再開する。
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Strategy for Future Research Activity |
鹿児島大学に機器が到着次第、実験台の立ち上げを行い追加データを取得する。論文発表に向けて解析の洗練化および現行の準備を始める。
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Causes of Carryover |
2022年4月に研究を開始したが、二光子顕微鏡を設置するスペースが2023年2月まで整っていなかった。2月に二光子レーザー・二光子顕微鏡の移動手続きを前所属大学で開始したものの、事務処理の遅れから移動が完了しておらず、結果として新たに補充・追加すべき機器の購入が次年度にずれ込んだ。当初の予定通り、二光子顕微鏡システムの再立ち上げの購入に充てる予定である
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Research Products
(1 results)