2021 Fiscal Year Research-status Report
The Creation of an International Joint Research of the "Wall of Genghis Khan"
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20KK0012
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
ボルジギン 呼斯勒 昭和女子大学, 国際学部, 教授 (40600193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松川 節 大谷大学, 社会学部, 教授 (60321064)
高井 龍 大谷大学, 文学部, 助教 (80711308)
二木 博史 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90219072)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | チンギス・ハーンの長城 / モンゴル / 北東アジア / 国際共同研究 / 中国 / ロシア / アーカイブ / 基盤の創成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究代表者と研究分担者、現地の共同研究者が、研究目的に沿って、本研究テーマに関わる研究基盤の強化につとめた。 第一に、研究代表者と共同研究者は、2021年9月にドルノド県チョイバルサン郡とツァガーンオボー郡の一部の遺跡を踏査し、年代測定用試料を採取する目的で試掘を行った。第二に、研究代表者と研究分担者は、チンギス・ハーンの長城に関する文献を収集し、検討した。第三に、研究代表者と研究分担者、共同研究者が第14回ウランバートル国際シンポジウムにて、成果を発表した。 その成果は以下の通りである。第一に、現地調査によって、チンギス・ハーンの長城嶺北ラインの堡塁は基本的に長城の南側に構築されていること、堡塁の近くには、川か湖、ボラグ即ち泉といった水源があることなどを確認した(ボルジギン・フスレ、J.オランゴア、Ch.アマルトゥブシン、Ts.トゥメン等)。第二に、チンギス・ハーン嶺北長城とバルスホトⅠ城との関係については、哨戒線としての長城ラインと補給防御拠点としての辺防諸城という視点だけでなく、モンゴル・アメリカ・イスラエル隊が提唱したような、長城ラインと植民集落が平時の人流を監視・抑制する「ランドマーク」として機能した城郭都市であるとの視点をもち、考古学的発掘調査や分析を行う必要性を指摘した(松川節)。第三に、日本の陸軍参謀本部が1920年に出版したサイルオス地域の地図は、当該地域の初めての近代的地図として、また当時の日本の政策、軍の方針を示す歴史資料として独自の価値を有することを明らかにした(二木博史)。第四に、金界壕の理解を深めることは、チンギス・ハーン長城を相対的に見つめる視点を獲得する意義を有するとともに、中国史における異民族の興亡を理解するにあたっても資するものであること、長城や界壕が決して一民族の一時代の建築によるものでないことを指摘した(髙井龍)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、研究代表者と海外の共同研究者、研究協力者はモンゴル国ドルノド県チョイバルサン郡とツァガーンオボー郡の「チンギス・ハーンの長城」堡塁No.16、31及びヘルレンバルス・ホトI遺跡を詳細に踏査し、年代測定用試料を採取する目的での試掘を行ったと同時に、堡塁No.17に対して予備調査を実施した。また、2022年3月には同県ゴルバンザガル郡で堡塁No.25などに対して予備調査を実施した。発掘調査では、土器片、鉄製品の破片、鋳造鉄製鍋の破片、陶器片、銅銭、鋳造鉄製の臼、容器など興味深い遺物が出土したほか、この遺跡の年代測定を可能にする家畜の骨片も採取された。今は、年代測定の作業を遂行中である。 研究代表者と研究分担者は、日本、モンゴルの研究者と意見を交換し、段階的成果を得ることができ、「チンギス・ハーンの長城」の現状と世界各国の調査・研究の成果を整理し、認識を深め、今後の課題をさらに明確した。 さらに、研究代表者と研究分担者、海外の共同研究者、研究協力者が論文5本を執筆し、第14回ウランバートル国際シンポジウムで報告した。その成果は『モンゴルと東北アジア研究』第7号に掲載された。さらに、同成果は『日本モンゴル学会紀要』第52号(2022年)に紹介された。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究代表者と研究分担者が、研究目的と研究計画にかかげた三つの基本コンセプトにもとづき、モンゴル、中国、ロシアで現地調査を実施し、中間成果をまとめ、研究を深める。 具体的には、2022年度に、研究代表者と研究分担者二木博史、松川節、高井龍は、研究協力者Ch. アマルトゥブシン、J. オランゴア、U. エルデネバト、Ts. トゥメン等の協力を得て、モンゴル国ウムヌゴビ県、ドルノド県で現地調査を実施するほか、中国、ロシア領内のチンギス・ハーンの長城と比較する。同年9月に、在モンゴル日本大使館と日本モンゴル学会の協力を得て、ウランバートルで国際シンポジウムを開催し、それまでの研究成果を公表する。 中国内モンゴル自治区での現地調査には、研究代表者とチメデドルジ等の共同研究者、研究協力者が参加し、同地域におけるチンギス・ハーンの長城の歴史的・社会的・文化的空間を読み解く。 なお、感染症危険情報の発出にともなって当該国への入国が制限される場合、本研究は研究環境を整備し、万全の対策を取る。
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Causes of Carryover |
1.新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、研究分担者の現地調査を延期せざるを得なかった。このため、次年度に旅費と発掘調査の費用として繰越使用することにしたものである。2.新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021年度現地調査で発掘したサンプルの現地からの持ち出しに時間がかかり、放射性炭素年代測定の費用の支払いは2022年度に持ち越されたため。
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Research Products
(13 results)