2021 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア大陸部における後期更新世人類の環境適応の解明
Project/Area Number |
20KK0013
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋泉 岳二 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20237035)
澤浦 亮平 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (20816201)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60452546)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20269640)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
Keywords | 東南アジア大陸部 / ベトナム / 後期更新世 / 石灰岩洞穴遺跡 / 発掘調査 / 生物遺骸 / 環境考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア大陸部における更新世人類の環境適応を明らかにすることは、ユーラシアの人類史を理解する上できわめて重要である。本研究は、日本とベトナムの国際研究協力体制のもと、ベトナム北部の後期更新世人類遺跡と目されるPhung Quyen石灰岩洞穴を発掘し、当該期の適応戦略の総合的解明を目指す。研究チームには、動物考古学者、考古化学者、花粉分析学者、年代測定学者、考古学者らが参加し、出土動物資料の形態分析、コラーゲンタンパク分析、古DNA分析、花粉分析、AMS年代測定などに従事する。本研究は、先端的な発掘技術と多彩な環境考古学的研究法をベトナムの洞穴調査に導入し、東南アジア大陸部における人類史解明の新たな展開を推進しようとするものである。 2021年度は、日本とベトナムの共同研究チームが、Phung Quyen洞穴の発掘調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19感染拡大を受け日本側研究者の海外渡航中止を余儀なくされたため、日本側研究者はオンラインビデオ通信を利用したリアルタイムのリモート参加とし、ベトナム側研究者と現地雇用ベトナム人作業員が掘削作業に従事する方式に変更した。発掘は2021年7月21日から29日までの9日間で実施した。1m×2mの調査区を設定し、堆積物は全て乾燥フルイで選別して、微細遺物の採取に努めた。調査にかかる人件費・運搬費・年代測定分析費は、本研究資金から拠出した。この発掘において、ホアビン文化期の石器多数と動物資料を収集した。また、出土炭化物5点の年代測定では、5点とも較正年代で約2万4千年前の値を得た。2022年度は、日本側研究者がベトナムを訪問し、出土資料の環境考古学的分析を実施する予定である。また、Phung Quyen洞穴の発掘調査を継続し、資料の増加を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度には、研究代表者と研究分担者がベトナムに渡航してPhung Quyen洞穴を発掘し、また、ハノイのベトナム考古学院で出土資料の環境考古学的分析に取り組む予定であった。しかし、COVID-19の流行が収束しなかったため、渡航を中止せざるを得なかった。発掘調査について、研究実績の概要に記載したとおり、ベトナム側研究者らが掘削作業を担当し、日本側研究者がリモート参加する方式に変更して実施した。出土資料の環境考古学的分析について、発掘で出土した炭化物をベトナムから日本に郵送して年代測定を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
【Phung Quyen洞穴の発掘調査】2021年に引き続き、ベトナム北部ホアビン省マイチャウ村のPhung Quyen洞穴で発掘調査を実施する。調査期間として10日間を予定しており、日本・ベトナムの共同調査チームが発掘作業に従事する。掘削土はすべてフルイにかけ、微小遺物を採集する。レーザー距離計測器を用いた洞穴測量を実施し、調査区の平面図と層序図を作成する。 【Phung Quyen洞穴出土資料の環境考古学・考古科学的分析】ハノイのベトナム考古学院を訪問し、2021・2022年の発掘で得た資料の整理と分析を実施する。分析の方法は次の通りである。(1)出土動物相の解明:貝類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など多岐に渡る動物群の種同定を行い、生物地理学的検討も加えつつ、後期更新世の動物相を復元する。(2)出土動物の定量的評価:同定資料数(NISP)と最小個体数(MNI)を算出し、動物資源利用の選択性について検討する。(3)解体痕と部位別出現頻度の分析:中・大型哺乳類の解体痕および部位別最小出土数(MAU)の検討に基づき、解体行動を復元する。(4)コラーゲンタンパク分析:断片資料のコラーゲンタンパク分析を実施し、動物相解明の一助とする。(5)人骨の人類学的研究:年齢・性別推定、形態計測的検討、DNA分析、古病理学的検討を行い、出土人骨の形質を解明するとともに生前の生活環境を推定する。(6)花粉分析:コラムサンプリングで得られた堆積物中の花粉を分析し、植生環境を復元する。(7)年代測定:出土炭化物と骨について、AMS法による年代測定を実施する。(8)文化的基盤の検討:人工遺物の検討に基づきの文化的基盤を把握する。
|
Causes of Carryover |
当初計画では2021年度に研究代表者と研究分担者がベトナムのPhung Quyen洞穴で発掘調査を実施し、また、ハノイのベトナム考古学院を訪問して出土資料の調査を進める予定であったが、COVID-19流行のためこれらのベトナム出張を取りやめたことで、予定していた出張旅費を使用せず、次年度使用額が生じた。これに伴い、助成金の使用計画を一部変更し、次年度使用額を2022年度のベトナム出張旅費と発掘調査経費、および出土資料の分析費に充てることとした。
|
Research Products
(17 results)