2022 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア大陸部における後期更新世人類の環境適応の解明
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20KK0013
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋泉 岳二 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20237035)
澤浦 亮平 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (20816201)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 教授 (60452546)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20269640)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | 環境考古学 / 後期更新世 / 東南アジア大陸部 / 石灰岩洞穴 / 発掘調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア大陸部における更新世人類の環境適応を明らかにすることは、ユーラシアの人類史を理解する上できわめて重要である。本研究は、日本とベトナムの国際研究協力体制のもと、ベトナム北部の後期更新世人類遺跡と目されるPhung Quyen石灰岩岩陰遺跡を発掘し、当該期の適応戦略の総合的解明を目指す。研究チームには、動物考古学者、考古化学者、花粉分析学者、年代測定学者、考古学者らが参加し、出土動物資料の形態分析、コラーゲンタンパク分析、古DNA分析、花粉分析、AMS年代測定などを実施する。本研究は、先端的な発掘技術と多彩な環境考古学的研究法をベトナムの洞穴調査に導入し、東南アジア大陸部における人類史解明の新たな展開を推進しようとするものである。 2022年度は、日本とベトナムの共同研究チームにより、3月7日から3月22日にかけて、Phung Quyen岩陰遺跡の発掘調査を実施した。2021年度に発掘した調査区で、さらに下層の掘削を進めた。堆積物は全て乾燥フルイおよび水洗フルイで選別して、微細遺物の採取に努めた。調査にかかる費用は全て本研究資金から拠出した。この発掘において、ホアビン文化期の石器多数と動物資料および年代測定用の試料になりうる多数の炭化物を収集した。特筆すべき成果として、全ての層位から一定量の魚骨が出土したこと、焼骨や人為的な骨破砕など動物利用様相の復元に資する動物考古学的証拠を多く得たこと、少なくとも2万4千年前をさかのぼる層から抽象的な意匠を想起させる線刻礫を発見したことが挙げられる。2023年度は、日本側研究者がベトナムを訪問し、出土資料の環境考古学的分析を実施する予定である。また、ベトナムの共同研究者を招聘し、東南アジア考古学会などで成果を発表してもらうことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者がベトナムに渡航してPhung Quyen岩陰遺跡を発掘し、また、ハノイのベトナム考古学院で出土資料の環境考古学的分析に着手した。前年度までCOVID-19の流行により渡航計画の中止などを余儀されたが、本年度は計画通りに調査研究を遂行することができた。日本・ベトナムの共同研究体制も良好な関係のもとで構築できており、出土資料の環境考古学的分析を進めている段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
【Phung Quyen岩陰出土資料の環境考古学・考古科学的分析】ハノイのベトナム考古学院を訪問し、2021・2022年度の発掘で得た資料の整理と分析を実施する。分析の方法は次の通りである。(1)出土動物相の解明:貝類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など多岐に渡る動物群の種同定を行い、生物地理学的検討も加えつつ、後期更新世の動物相を復元する。(2)出土動物の定量的評価:同定資料数(NISP)と最小個体数(MNI)を算出し、動物資源利用の選択性について検討する。(3)解体痕と部位別出現頻度の分析:中・大型哺乳類の解体痕および部位別最小出土数(MAU)の検討に基づき、解体行動を復元する。(4)出土動物の形態計測的研究:骨および貝類の形態計測を実施し、現生標本データとの比較を通して、狩猟対象のサイズに基づく選択性の有無や捕獲圧について検討する。(5)コラーゲンタンパク分析:断片資料のコラーゲンタンパク分析を実施し、動物相解明の一助とする。(6)人骨の人類学的研究:年齢・性別推定、形態計測的検討、DNA分析、古病理学的検討を行い、出土人骨の形質を解明するとともに生前の生活環境を推定する。(7)花粉分析:コラムサンプリングで得られた堆積物中の花粉を分析し、植生環境を復元する。(8)年代測定:出土炭化物と骨について、AMS法による年代測定を実施する。(9)文化的基盤の検討:人工遺物の検討に基づきの文化的基盤を把握する。
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Causes of Carryover |
当初計画では2021年度に研究代表者と研究分担者がベトナムのPhung Quyen岩陰遺跡で発掘調査を実施し、また、ハノイのベトナム考古学院を訪問して出土資料の調査を進める予定であったが、COVID-19流行のためこれらのベトナム出張を延期し、2022年度に実施した。これに伴い、当初計画では2022年度に予定していた一部の分析について、2023年度に実施することとした。この費用については2023年度に使用するものとし、2022年度に使用しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2023年度に概ね全額を使用する見込みである。
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[Presentation] Human bone artifacts from the late Neolithic Liangzhu site complex2022
Author(s)
Junmei SAWADA, Kazuhiro UZAWA, Minoru YONEDA, Yu ITAHASHI, Takashi GAKUHARI, Shinji KUBOTA, Liu BIN, Wang NINGYUAN, Chen MINGHUI, Wang YONGLEI, Song SHU, Kenji OKAZAKI, Hirofumi TAKAMUKU, Hirotaka TOMITA, Yasuo HAGIHARA, Fumiko SAEKI, Takashi NARA, Shinichi NAKAMURA
Organizer
SEAA9 (Ninth Worldwide Conference of the Society for East Asian Archaeology)
Int'l Joint Research
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