2021 Fiscal Year Research-status Report
現代インドにおける地域間システムと地方都市圏の「包摂的成長」
Project/Area Number |
20KK0016
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
後藤 拓也 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (00452798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友澤 和夫 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (40227640)
笛吹 理絵 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (50850153)
田中 健作 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (20636469)
勝又 悠太朗 広島大学, 現代インド研究センター, 特任助教 (80896134)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | 人口移動 / ビハール州 / ハリヤーナー州 / 都市化 / 産業発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、前年度に引き続き、インドにおける州間の人口移動パターンについての空間的分析を行った。その研究方法としては、インド政府が刊行する最新版の2011年版センサスデータを用いた分析を行った。具体的には、2011年のセンサスデータをもとに、インド東部のビハール州における最近5年間の州間人口移動にみられる特徴を明らかにした。ビハール州における人口移動は流出超過を特徴とするなど、出稼ぎ労働者の供給地域である当州の特徴をよく現している。ビハール州からの人口流出パターンを詳細に分析した結果、その人口移動先は、デリーやハリヤーナー州など、経済発展の著しいインド首都圏一帯に及ぶ地域が大きな比率を占めることが明らかとなった。ビハール州からの人口移動先は、従来は西ベンガル州などインド東部の都市圏に向けた移動が主流であったが、2000年代の経済成長にともなって、デリー首都圏への出稼ぎ移動に変化するようになったと考えられる。 さらに本年度は、そのようなビハール州からの出稼ぎ移動が、デリー首都圏の都市化や産業発展にどのような影響を与えているのかについての地域的分析を行った。具体的には、デリー首都圏のハリヤーナー州における近郊農村の発展過程を詳細に検討した結果、ビハール州を始めとするインド東部からの出稼ぎ労働者が2000年代に多く流入し、食料品や衣料品の店舗を経営するようになったことが判明した。また、同じくハリヤーナー州において近年の発展が著しいブロイラー養鶏産業の産地形成過程を分析した結果、ビハール州を始めとするインド東部からの出稼ぎ労働者が、ブロイラーの飼養労働者として養鶏場に定着し、産地化に少なからぬ役割を果たしていた。このように本年度の研究では、デリー首都圏の都市化や産業発展において,ビハール州を始めとするインド東部からの出稼ぎ労働者が大きな役割を果たしていることを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況については、もともと研究期間の前半(2020年度および2021年度)において上述のようなセンサスデータを用いた統計的分析を主に実施する計画であったため、おおむね順調に進展していると判断できる。また、そのような統計的分析に加えて、本年度はデリー首都圏の都市化や産業発展に関する地域的分析を併せて実施できたことも、本研究の進捗状況をおおむね順調であると評価する根拠になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策については、以下のような計画を立案している。まず、本研究を推進する上で、研究計画を修正せざるを得ない状況が生じたため、それに対する研究計画の見直しおよび変更を2022年度に行う予定である。具体的には、インド側の研究協力者の健康上の理由によって、本研究の現地調査に対するサポートを得ることが困難になったという問題が生じた。もともと本研究では、ウッタル・プラデーシュ州において現地調査を行う予定であったが、その研究協力者の方には現地コーディネーターを務めて頂くことになっていた。すなわち現状では、これまで計画していたウッタル・プラデーシュ州での現地調査プランを大幅に見直し、研究対象地域をハリヤーナー州などに変更する必要がある。そのような研究対象地域の変更について、2022年度に検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、2020年度より世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が継続しているため、インドでの研究打ち合わせや現地調査が困難になったことに起因している。この点に関しては、新型コロナウイルス感染の収束についての見通しが立たないため、その問題が落ち着き次第、すみやかにインドにおける研究打ち合わせや現地調査を行い、今回生じた繰り越し金額を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)