2023 Fiscal Year Research-status Report
ウォーレシア・パプア域の沈香―種の分布・成分・遺伝資源保全の共同研究
Project/Area Number |
20KK0019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 勇 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (80093334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 美千穂 国立医薬品食品衛生研究所, 生薬部, 部長 (30283592)
藤原 裕未 国際医療福祉大学, 成田薬学部, 講師 (90756511)
柳澤 雅之 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (80314269)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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Keywords | 沈香 / 沈香分布 / 成分 / 遺伝資源保全 / ウォーレシア・パプア域 / 生態資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はロンボク州西ロンボク県Ligsar、Desa Gegerung、Dusun Jelateng(hamlet)やGunungsariにて、天然の沈香資源の枯渇、現在のインドネシアにおける生育状況、植林の展開、採集や加工等について現地調査を行った。アラブ系商人とのインタビューにおいては、天然物と植林物の流通、それぞれの価格の変化等について情報を得た。また、連携研究機関であるマタラム大学を訪問し、理学部長のRahadi Wirawan博士、Tri Mulyaningsihhaka博士、Apt. Anggit L. Sunarwidhi(Faculty of Medicine)、他数名の連携研究者や関係者による研究打ち合わせを行った。熱帯雨林が産出する森林資源利用が近年全体的に減少傾向にあるとされるなかで、沈香の資源分布や利用、保全に向けたMOU締結などの研究協力体制や計画について再確認した。 研究代表者が収集したインドネシアの沈香試料のDNA分析については、2021年度から2022年度に実施した解析をもとに、Genbankの配列情報との比較を行った。解析を行ったtrnL-trnF領域、matK領域、psbA-trnH領域の結果をまとめると、1検体はGyrinops salicifoliaが基原種であると示唆された。また、2023年度のロンボク島での現地調査にて収集した試料の解析を行ったところ、その基原種はGyrinops属であることが示唆された。Genbankの配列情報は、Aquilaria属、Gyrinops属の両方ともここ数年で増加しつつあるものの、信頼のできるデータはまだ不足している。基原種が科学的に同定された配列情報を蓄積することは、基原植物の鑑別には重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度までのコロナ禍による渡航制限により全体的な進捗は遅れているものの、今年度は現地調査を開始し、連携研究機関の関係者と対面で今後の研究体制や計画を再確認することが出来た。山田勇と柳澤雅之は、昨年度に引き続きこれまでの現地調査記録に基づく整理や分析を行い、沈香調査を中心としたこれまでの山田のフィールドノートやフィールドの写真をアーカイブ化したホームページの基盤を構築し公開した。伊藤美千穂と藤原裕未はDNA解析について未だにデータが不足している状況であるが、これまで山田が採取したインドネシアの沈香サンプルに加え新たなサンプルを得て、Genbankの配列情報の比較を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
伊藤と藤原によるDNA解析について、基原植物の鑑別を困難にしている原因として、基原が明らかな試料が不足していること、試料の収集地域に偏りがあることが考えられる。今後の現地調査にて、植物全体の情報から基原が明らかである試料の収集に努め、遺伝子配列の解析を進める。 山田と柳澤は、文献調査と現地調査の双方のアプローチをとる。文献調査では、山田による過去の沈香調査の通時的整理をさらにすすめ、インドネシア全体での天然資源の分布を再確認し、栽培化の進展に関する研究知見の蓄積を行う。さらに、現地調査にて、パプア州を含めた、未確認地域の沈香サンプルの収集と生育状況の記録を行い、伊藤・藤原によるDNA分析とあわせて、種の同定と資源の伝播について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
昨年度までのコロナ禍下の渡航制限による海外調査未実施のため、繰越額が生じ、今年度についても次年度使用額が生じた。次年度は、全体計画の遅れを取り戻すよう海外調査を実施し沈香サンプルの収集と生育状況の記録、DNA分析、種の同定と資源の伝播やその利用についての情報を収集していく。
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