2023 Fiscal Year Research-status Report
Restoration and inheritance of living heritage under a vulnerable social environment of a port city in southern Oman
Project/Area Number |
20KK0020
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 経営推進部, 准教授 (90599226)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 直之 東北大学, 工学研究科, 助教 (30814389)
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 部長 (60435906)
大西 秀之 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60414033)
近藤 洋平 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20634140)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
Keywords | リビングヘリテージ / 文化遺産 / ケイパビリティー / アクションリサーチ / ドファール / オマーン / 伝統建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年4月30日から5月1日にかけて、マスカットのスルタン・カーブース大学(SQU)で専門家ワークショップを開催した。日本からは建築班の松本直之(分担者)と林憲吾・腰原幹雄及び学生2名(以上協力者)、リビングヘリテージ(LH)班の近藤康久(代表者)と大西秀之(分担者)、黒沼太一(協力者)が対面、石村智と近藤洋平(以上分担者)がオンラインで参加した。オマーン側からは海外共同研究者のナイーマ・ベンカリらSQU関係者と、ソハール大学モシン・クレシ准教授が参加し、意見交換を行なった。次いで5月2日から6日にかけて、サラーラにて現地調査を実施した。建築班は山雄和真(協力者)及びベンカリの参加を得て、「判事の家」及び周辺地区のドキュメンテーションを行なうとともに、タカのヘリテージ・インを訪問し、修理技術者から伝統構法について聞き取った。その間に、LH班はアルバリード、スムフラム、ワディ・ダウカの世界遺産地区を視察し、現地の遺産観光省職員から遺跡の保護活用の現状について聞き取った。「判事の家」の所有者とも今後の計画について打ち合わせた。
現地訪問後、建築班は建築材料の放射性炭素年代測定と強度試験を実施し、リノベーション計画のプロポーザル案の作成を進めている。LH班は国内外のLHの保護とコミュニティの関係についての事例研究を進め、成果を8月28日に東京文化財研究所で研究会に持ち寄って討議した。その際、大西が「LH班報告:オマーンにおけるリビングヘリテージの可能性」と題する基調報告を行なった。その成果をふまえ、石村が国際会議 World Forum for Intangible Cultural Heritageにて発表を行なった。今年度から分担者に加わった近藤洋平は、現在のオマーン政府による文化遺産政策の展開、およびLH活用の実際と課題を、国王の言葉、省庁の再編、文化遺産および観光業に関する諸法令、および学際的プロジェクトの動向から考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、前年度まで3年連続で現地に渡航できず、今年度が科研期間で初めての現地渡航となった。当初計画では2023年度までに実施することとした「判事の家」と周辺地区の文化遺産総合調査を遂行することができた。また、当初計画で想定した現地関係者とのワークショップに代えて、SQUでの専門家ワークショップと、現地技術者・所有者との対話も実現できた。これにより、計画進行の遅れを相当程度挽回できた。しかし、修復とリノベーションの実現に向けた現地コミュニティーとの関係の再構築にはさらに時間を要することと、試料の分析及びリノベーション計画案の作成が遅れていることから、全体としては当初計画よりもやや遅れていると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる今年度は、前年度までの成果をまとめ、国際学会等の場で成果発信を進めていく。円安により航空賃と現地の物価が高騰しているため、人数を絞って現地に渡航し、科研終了後も見通して、今後の研究の進め方を海外共同研究者及び現地コミュニティーと協議する。また、現地で得た知見を、日本のコミュニティー主導型伝統建築リノベーションに適用することも、研究展開の道筋として検討する。
|
Causes of Carryover |
前年度まで3年連続で現地への渡航ができなかったことと、試料の分析が遅れていることから、次年度使用額が生じた。最終年度の成果統合に向けて、計画的に執行していく。
|
Research Products
(17 results)