2021 Fiscal Year Research-status Report
The 'objects' and their sacred power in the religions of Tibet -- an international collaborative survey
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20KK0021
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
長野 泰彦 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (50142013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津曲 真一 大東文化大学, 文学部, 准教授 (20615033)
村上 大輔 駿河台大学, 経済経営学部, 准教授 (50778339)
鳥谷 武史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員研究員 (50814901)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | チベット / 宗教基層 / 憑依 / 物質性 / 聖性 / モノ / 儀礼 / ポン教 |
Outline of Annual Research Achievements |
【意義・目的・重要性】本研究は儀礼・憑依・呪物や儀礼具などを通じてチベットの宗教実践の有り様を詳細に参与観察し、そこに働くモノ(マテリアル性)と聖性を軸にチベットの宗教文化基層に通底するものは何 かを明らかにすることを目的としている。チベットの宗教文化はアジアにおける精神文化を支える柱のひとつであり、分厚い研究の蓄積がある。その大半を占める仏教に関する研究は高度に洗練されてきたが、その反面、人々の信仰の基底をなす普遍的特徴や教学・憑依・儀礼において用いられる具体的なモノへのアプローチや 解釈は僅少である。モノの持つエージェント性には慎重な配慮を払いつつ、チベット仏教・ポン教・民間習俗での儀礼と憑依、そこに介在する儀礼具や護符などの呪物に注目し、一般の人々の目線に立って、その内容・意味・用途の記述と文献学的裏付けを行い、そこ に働くマテリアル性と聖性の動態、及び、その現代的意味を描出する。文化人類学、宗教学、チベット学、図像学の方法論、及び、フィールドワークと文献学という異なる手法を組み合わせつつ、中国中央民族大学中国少数民族語言文学学院、ツェリン・タール(才譲太)教授とそのチームとの協働で調 査研究を行う。教義からではなく、モノを通じてチベットの宗教実践の有様と宗教文化基層を一般民衆の目線から明らかにしようとするアプローチであり、その普遍性と特殊性を共時的に把握する斬新な試みである。 【2021年度実績】(1)本科研費の趣旨に鑑み、海外共同研究者、才譲太教授とWeChatによって打ち合わせを重ね、目的に最も叶う儀礼をmkha' long gsang mdosと特定できた。 (2)次にこの儀礼に関わる儀軌書2種をポン教経典論部の中に発見したので、この版本の比較検討と校訂に着手した。(3)中国内で儀礼を執行できない事態に備え、ネパールのポン教寺院での可能性を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は現地での儀礼などの参与観察と記述を前提とし、それらの文献による裏付けを経て、そこに働くモノと聖性のダイナミズムを文化人類学・宗教学・チベット学等の学際的方法論、及び、フィールドワークと文献学という異なる手法を組み合わせて、海外共同研究車と理論構築を行う。しかし、現下のコロナ禍の下、フィールドワークは実施できていない。この点で「やや遅れている」と自己評価せざるを得ない。だが、一方、代表者・分担者・海外共同研究者は先行研究で実績のある英仏の研究者と連絡を取り、文献と物質文化の両面で緻密な検討を行い、効果的な戦略を立てることに成功している。更に、中国での儀礼執行が不可能な場合に備え、ネパールのポン教寺院で実施できるよう、先方でワーキンググループを組織するよう依頼した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)海外共同研究者、才譲太教授とのZOOM会議を通じて、文献学的作業を継続して行い、解析を高次化させる。 (2)2022年度後半に現地調査が可能との前提で儀礼執行準備を進め、中国青海省またはネパール・カトマンドゥ市で参与観察を行う。 (3)上記儀礼の観察を効率的に行うため、先行研究の実績を持つ研究者の下で種々の予備的調査を英仏で行う可能性がある。 (4)特に重大な研究計画変更は予定していない。
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Causes of Carryover |
(1)コロナ禍が終熄していないため、調査研究の対象国に出張できず、また、国内の研究打ち合わせの移動も充分には行えなかった。このため、当初予定していたフィールドワークに基づく実質的調査研究と対面によるデータ解析も不可能だった。 (2)国内外の研究者との文献解析作業は一定程度できているので、2021年度未使用額と2022年度分を合わせ、引き続き作業を行う。 (3)2022年度中には予定していた現地調査研究が実施できると思われるが、一方、これが不可能である場合の代替方策を全分担者と協議する。
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