2021 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける「オールハザード型」防災対策枠組構築のための共同研究
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20KK0037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉 貴子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00790354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 美和 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (40619805)
藤田 久美子 特定非営利活動法人 国際斜面災害研究機構, 執行部, 研究推進員 (00637069)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | オールハザード / 自然災害 / パンデミック / 複合災害 / Natech |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの影響により、予定していた海外での調査や共同研究が延期となってしまったが、国内における事例収集を中心に、海外からのオンライン参加を含めた専門家との国際ワークショップなどを開催した。この研究では、災害を自然災害のみととらえずに新型コロナウィルスなどのパンデミックや自然災害を起因とする産業災害(Natech)などを対象としている。まずは、日本国内におけるNatech事例について情報収集し、各事例を3つのグループに分類することを試みた。国内にはすでに多くのNatech事例が存在しているにも関わらず、いまだ行政の部局が横断的に取り組んでいる事例が見られない。縦割り行政による弊害について現状をまとめ、国際ワークショップで発表した。また、人口密度も高く自然災害が発生しやすい地域である兵庫県のNatechについて、発生の歴史等についてまとめた。兵庫県は高度経済成長期(1960-70年)以降、Natechを経験するようになったが、自然災害の延長として捉えられているなど、Natechとして扱われている事例が少なかった。阪神淡路大震災に発生したNetechの事例を含め、国際ワークショップで発表した。さらに、新型コロナ禍における自然災害対応など複合災害時における災害対応について、アメリカ、インド、日本、フィリピンでアンケート調査に基づく比較研究を行い、それぞれの国と自然災害の特徴により、影響の違いや課題を分析した。その結果をまとめた論文が国際ジャーナルに掲載された。この研究ためのアンケート調査により、今後のオールハザード型防災に関する研究の基盤となるデータも収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスにより、海外渡航が制限されているため、海外渡航および現地での共同研究等に支障がでている。そのため、これまでの研究は、国内の事例収集やオンラインと対面のハイブリッド形式によるワークショップ開催に限られている。2021年11月には、東北大学の災害科学国際研究所にて国際ワークショップを開催した。このワークショップには、日本から8名の専門家が対面参加し、海外からは、国連防災機関のアジア太平洋事務所(UNDRR)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、アジア災害準備センター(ADPC)、アジア災害対応準備NGOネットワーク(ADRRN)、アテネオ・デ・マニラ大学内のマニラ天文台、インドネシアぺルタミア大学、マレーシア工科大学から専門家がオンライン参加し、オールハザードアプローチについて、発表・意見交換を実施した。このワークショップでの議論で、まずは「オールハザードアプローチ」の学問的定義を行うことの重要性が指摘され、このアプローチの現在の政策への反映、実施状況などの事例を収集し、現在のパンデミックの状況なども含めた総合的アプローチとして新たなモデルを提言することが重要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまでの文献調査、事例収集などをもとに、論文執筆とオールハザード防災に関する書籍の出版を検討している。論文は、縦割り行政による弊害がNatech対応を遅らせていると仮定し、そうした現状においても災害対応ができている日本の緊急対応について、消防・消防団・警察など各組織の体制の違いを分析し、その結を果を論文にまとめる。さらに、ヨーロッパ、北米などの先進国においてNatechが認知されるきっかけとなった事例を紹介し、それぞれの地域でどのような研究や対策が進められているかについて整理する。さらに、「オールハザード」に含まれるパンデミック、Natech, 原子力災害など様々な種類の災害と自然災害が同時に発生した場合のアプローチなどの事例をまとめ、オールハザードを対象として取り組むべき共通のアプローチの洗い出しを試みるために、書籍として出版することも検討している。また、新型コロナウィルスの状況が少しずつ改善され、渡航制限も緩和されていることから、様子をみつつ、次年度は、本研究の主な対象国となっているインドネシアとマレーシアにて、現地調査や専門家との意見交換、共同研究の実施を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、予定していた海外渡航、調査などの活動が延期・中止となり、その経費として充当していた経費に余剰が発生した。次年度は、新型コロナウィルスの状況を踏まえつつ、予定どおり海外調査を実施し、連携大学との共同研究を本格的に開始したいと考えている。
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Research Products
(8 results)