2022 Fiscal Year Research-status Report
Demonstrative research on problems of the Technical Intern Training Program toward the construction of the sustainable food supply system.
Project/Area Number |
20KK0043
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
二階堂 裕子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (30382005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駄田井 久 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (60346450)
東口 阿希子 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (90804188)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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Keywords | 外国人技能実習生 / 食料供給システム / 環境保全型農業 / ベトナム / 技能移転 / 農業の高付加価値化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、ベトナムでの調査実施に向けて、まずオンラインによるミーティングを2回行い、日本人とベトナム人の研究メンバーが調査の時期や具体的な内容について意見を交換した。そこでの議論をふまえて、ベトナム人のメンバーがベトナム南中部に位置するビンディン省の省都、クイニョンへ出張し、帰国した元技能実習生を対象とする予備調査を実施した。その元技能実習生は、日本で環境保全型農業に従事し、持続性の高い農法を学んで帰国した。現在は、日本で修得した知識と技能を活用し、無農薬・無化学肥料の農法に取り組んでいる。彼の事業は軌道に乗り、現在規模拡大を続けていることが明らかとなった。 その後、新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されたことを受けて、日本人とベトナム人の研究メンバーがともにベトナムでの調査を実施することになった。まず、ホーチミン市内にある技能実習生の送り出し機関2社を訪問し、コロナ禍における技能実習生の就労状況や送り出し機関としての今後の方向性などについてインタビューを行った。その結果、2社とも、帰国した技能実習生の日本での経験を活用した新しいビジネスの展開を模索していることがわかった。 さらに、クイニョンへ移動して、予備調査の対象となった元技能実習生の農場を訪ねた。そこでは、農場経営者である元技能実習生より、来日の動機や技能実習生としての経験、現在の農業経営の状況と将来展望などを聴き取った。とくに興味深かったのは、その元技能実習生の勧めによって、彼の農場の従業員である2人のベトナム人男性が、現在、香川県の農業者のもとで環境保全型農業に従事しているということである。こうした事実からも、元技能実習生が帰国後に農業ビジネスを展開するうえで、日本での就労経験が重要な位置を占めている様子が見て取れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで日越両国における海外渡航規制の影響を受けて、長らくベトナムでの調査が実施に至らなかったが、ようやく実現することができた。これにより、ベトナムからみた技能実習生の送り出しをめぐる動向や元技能実習生の帰国後の生活について、示唆に富んだ情報が得られた。また、現地でおよそ1週間にわたって、ベトナム人の研究協力者とミーティングや調査をともに行ったことにより、多くの知見の共有を図ることができただけでなく、今後の研究の方向性を丁寧に議論することが可能となった。 ただし、アジア圏で拡大する食料供給システムや、それを支える人的資源をめぐる現状を明らかにするという本研究の趣旨に照らせば、現在のところ、情報収集が十分になされているとは言い難く、結果として、考察を深めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、アジア圏で拡大する食料供給システムや、それを支える人的資源をめぐる現状を明らかにしたうえで、外国人技能実習制度を活用した食と農業の領域における人材育成と技能移転の可能性を探究するため、主として以下の調査研究活動を展開する。可能な限り、日本人とベトナム人の研究メンバーがともにこれらに参加する予定である。 第1に、ベトナムの農家による環境保全型農業の実施状況と、そうした農業に対する意識を明らかにするとともに、今後、必要とされている農業の技能や知識を把握する。具体的には、コショウやカカオなどの有機栽培農家をはじめとする農業従事者などが調査の対象となる。 第2に、ベトナムにおける食品企業の経営戦略と、それにもとづく生産体制や販路の現状を明らかにする。コショウの製造と販売を行っている日系のK社などの現地法人において調査を行い、こうした企業の経済活動状況とそれにもとづく人的資源に対する需要を探りたい。 第3に、ベトナムから日本への技能実習生送り出しに関する実態について把握するため、農業や製造業、および福祉の領域に技能実習生を送り出している機関において、職員や技能実習生候補生を対象とした調査を行う(日本国内に駐在事務所がある場合は、そこも対象となりうる)。そのうえで、アジアの新興国と日本が構築すべき人材の需給関係の望ましいありかたを検討する。 第4に、日本の農業や食品製造業の領域における技能実習生の就労状況や技能・知識の修得に関する実態を捉える。調査対象として、技能実習生の受け入れ機関(監理団体)と、受け入れ機関から技能実習生を派遣されている農業者を見込んでいる。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、令和2年度と3年度に予定していた国内やベトナムにおける調査のための出張が見送られたため、旅費および謝金として予算に計上していたかなりの額の費用が令和4年度に繰り越されたが、結果として繰り越し分のすべてを執行するには至らなかった。 次年度への繰り越し金は、主にベトナムおよび国内でのフィールドワークに要する旅費や、ベトナム人研究協力者の来日にともなう費用として使用したい。このほか、研究成果の報告のため、学会参加に要する旅費にあてる予定である。
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