2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of merging spherical tokamak formation scenario and its connection to steady/burning regime using ultra-high field reconnection heating
Project/Area Number |
20KK0062
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30726013)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 球状トカマク / 磁気リコネクション / コンピュータトモグラフィ / 加速・加熱・輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はコロナウイルス規制による渡航制限も全面撤回となり、2022年度末に実施した本格的な長期派遣再開の事前打ち合わせの通り、ST40実験再開前のイオン温度分光計測系整備派遣、実験キャンペーンに合わせた派遣、2024年度の次期実験に合わせた準備派遣の3つのステップでトカマクエナジー派遣を実施した。 4月から6月にかけての派遣では、前年度末に現地製作した16CH×6系統の光ファイバーバンドル(48本石英、48本プラスチックファイバ、合計96CH×12m)をコルゲートチューブに挿入して断線防止処理を施した後、ST40装置の管理区域内への設置作業を実施、レンズ固定治具と組み合わせてイオン温度の光学計測の集光系準備を完了した。並行して、同ファイバー他端へのFCコネクタ取り付け(96CH)および研磨を実施、分光器出口側の非点収差補正光学系も、より収差を低減した新システムへと改良を行った。 7月から9月はこのうち32CH分を利用した実験運用を開始、約3か月の間実験データ取得を行った。現地不在の帰国中も国内からリモート接続により運用を継続、日本時間で深夜の実験にも対応できるよう自動計測化するとともに運転条件の確立を行った(トリガー同期データ取得、現地サーバへのデータ保存、次のショットのトリガー待ちの全自動運転)。現地派遣の際は、磁気リコネクションに合わせたサブミリ秒時間スケールでの微細なタイミング調整をトムソン散乱計測担当者と現地で相談しながら設定し、リコネクション加熱のスケーリング則拡張に有益なデータ取得を行うことに成功、年度後半の学会等では招待講演等で最新データ紹介を実施した。 年度末の3月の派遣では、分光器側の改造を実施して96CH全チャンネルを利用できるように分光器を三重スリット仕様に改造を実施、翌年度6月頃のキャンペーンから二次元計測を開始できる環境を構築した。2024年度より全96CHを利用した2次元イオン温度計測開始を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度はコロナウイルス規制による渡航制限も全面撤回となり、2020~2022年にかけて長期化したコロナウイルスによる海外渡航規制に伴う現地実務連携遅れを挽回できる年度となった。東京大学学内の若手研究者国際展開事業による現地滞在費支援との併用により、本研究費による現地滞在費が抑えられたため残額は生じたものの、2023年度は現地に本格的に長期滞在しながらの実務連携が再開し、ビザ不要の期間内で最大規模の派遣を行うことができた。 コロナウイルスによる派遣中断期間に一度構成が崩れた東京大学持ち込みの32CHイオンドップラートモグラフィ本年度の連携活動を通じて完全に復旧し、またトムソン散乱計測用の大口径窓が利用可能となったことにより、装置中心付近を見込む視野と、50mm程度オフセットをつけた高さからプラズマを観測する視野の併用が実現、中性粒子ビームを見込む視野と見込まない視野を分けることによるリアルタイム荷電交換分光計測による空間分布測定が実現した。一部成果については既に2023年の国内外の学会(うち2回は招待講演)で速報公開を開始しており、近日論文出版を予定している。 年度終盤には、さらに分光器本体のマルチスリット化させるアップグレードが進み、2次元96CHのイオンドップラートモグラフィが完成(48CHは石英ファイバ、48CHはプラスチックファイバ-->2024年度に石英にアップグレード予定)、2024年度のキャンペーンから2次元計測としての運用スタートを予定。現地に長期滞在しながらの実務協力推進によって連携が深まったことを受けて、トカマクエナジーと東京大学間でより強固な国際共同研究契約の締結が進んだほか、新たな科研費23KK0246も2024年度から採択の評価を受けたことから、コロナウイルスによる年数そのものの遅れは存在するものの想定以上の成果へと昇華が進んでいるとして「当初の計画以上に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は最終年度に相当することから、年度前半に計画されている共同実験のキャンペーンショットを遂行の後、研究成果発表・論文化準備を開始する。現段階で計画されている直近の派遣は5月頃を予定しており、ST40実験で初めてとなるイオン温度2次元計測を開始する予定である。 東京大学から持ち込み済みのドップラートモグラフィ計測について、2023年度の初期運用を通じて、装置のセンターコイル周辺視野はリミター付近の不純物発光を大きく見込んでスペクトル構造が煩雑化するとともに、これによってICCD検出器にかけられるゲインが制約されることが分かったため、2024年度は集光系の視野範囲がセンターコイル近傍のリミター領域の発光を見込まないように修正を実施、分光測定に利用する線スペクトルのCVIライン光(λ=529.05nm)以外の不純物発光でゲインが制限されないようにして最大ゲイン計測を実施する。 東京大学からの持ち込み機器に加えて、2023年度からST40実験ではトムソン散乱計測も利用準備が整っており、イオン温度・電子温度・電子密度の同期計測準備が整ってきたことから、これらの計測機器も組み合わせてプラズマ合体加熱を通じた熱エネルギー変化の評価を行う。磁気リコネクションでつなぎかわる再結合磁場強度や(ポロイダル磁場)、リコネクション平面に垂直方向成分のガイド磁場(トロイダル磁場)を変化させた時に加熱がどのように変化するのか評価を行うとともに、東京大学のTS-6実験や英国カラム研究所のMAST実験のデータとも比較し、異装置連携を意識した統合スケーリングとしての研究成果とりまとめを実施し、次期装置設計の指針となる外挿性のある研究成果のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
2023年度はコロナウイルスによる英国派遣制限が全面撤回となり本格派遣が再開した一方、2023年度末に実験装置本体側も長期メンテナンスが必要となったことから派遣を中断し、本基金予算の延長が許される2024年度までの延長を行うこととした。本研究を通じて、トカマクエナジーと東大の協力が内部データ利用に踏み込む強固なものとなってきたことを受け、トカマクエナジー・東大両機関の知財部による「国際共同研究契約締結」が必要となり、知財部からの要請により同契約の準備期間は派遣中断が必要となった。2023年10月から2024年5月まではいずれにせよ長期で実験が停止するタイミングであったことから、再派遣は2023年度末の同共同研究契約締結完了を待つとともに、本基金予算の執行は2024年度に継続することを確定。現在、契約締結後の2024年3月より派遣を再開したところであり、次期実験再開は6月に計画されていることから、これに合わせた派遣を計画している。2次元計測に耐えるポート獲得には時間を有したが、2024年度より初めて96CHの高精細2次元イオン温度計測の実験投入準備が整ったことから、これを駆使した実験に合わせた派遣をより効果的に行えるように最終年度予算を確保した。2024年度のトカマクエナジー長期派遣・共同実験に加え、研究成果のとりまとめおよび論文投稿を開始し、2024年度を本研究課題の集大成の年度とする。
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Remarks |
吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞受賞、「NBIフリーイオン温度計測を用いたセンターソレノイドフリー立ち上げシナリオの研究」、核融合エネルギーフォーラム(2023)
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Research Products
(8 results)