2020 Fiscal Year Research-status Report
原始重力波の発見を目指す-ミリ波の広帯域観測で理解して分離するCMBと星間塵
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20KK0065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 誠 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90281964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 俊介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (30835020)
鈴木 惇也 京都大学, 理学研究科, 助教 (90795014)
梨本 真志 国立天文台, ハワイ観測所, 特任研究員 (90888132)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | 観測的宇宙論 / 超伝導検出器 / 星間塵 / 宇宙マイクロ波背景放射 / アモルファス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者がオランダSRONの研究者および国内分担者鈴木・本多と協力して、テネリフェ島テイデ観測所に設置した宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測望遠鏡GroundBIRDに搭載する超伝導検出器MKIDの開発を行った。今年度は、優先度が高い145GHz帯の検出器開発に注力した。基本デザインを2021年1月中旬までに完成し、デザインに基づいた検出器作成を行うためのフォトマスクを本財源を作成し、SRONに送った。コロナの影響でSRONでの作成開始時期が当初予定より遅れたが、年度内に作成に取りかかることができた。SRONで145GHz帯の検出器アレイを作成するのは、今回が初めての試みであったため、完成後の性能が設計時に期待された性能とどの程度マッチしているか確認する必要があった。そこでSRONの検出器素子作成プロセスの変更を最小限に抑えるという条件の元で作成することにした。これらの条件から今年度は1ウエハー23素子のアレイ検出器作成するという方針の下開発を進めた。 分担者の本多が、GroundBIRD望遠鏡制御・運用に必要なPCを本研究費で購入し、必要な設定を終えてテイデ観測所に設置した。 我々の先行研究でCMB shadowと名付けた新しい効果である星間塵によるCMB単極成分の吸収によるCMB擬似偏光をデータから精度よく取り除くデータ解析手法の開発に代表者と分担者の梨本が中心となって着手した。 海外研究協力者が推進するミリ波サブミリ波望遠鏡で得られたデータを活用した星間塵のミリ波放射過程の物理の理解の深化を推進するため、代表者と分担者の梨本が中心となって星間塵の熱史を追い熱放射のモデルをシミュレートする計算コードの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の中心課題は、GroundBIRDに搭載する145GHz帯超伝導検出器をSRONと協力して開発することであり、数ヶ月の遅れは生じているが概ね順調に進んでいる。コロナの影響でSRONに大学院生や若手研究者を派遣して性能評価実験に携わってもらうことで、若手に経験を積ませる計画は実現できなかった。しかし、デザイン開発にオンラインでの頻繁な情報交換により国内の若手研究者が携わることができ、超伝導検出器MKIDの開発で世界を先導するSRONが持つ開発のノウハウを若手が学ぶ機会を持つことができた。また、検出器の性能評価を行う測定系の構築を分担者の鈴木と本多が中心となって京都大学の研究室に構築でき、性能評価を国内で行う環境も整った。 GroundBIRD望遠鏡の制御・運営に必要な計算機環境の構築も分担者の本多が中心となって予定通り完了した。 CMBデータ解析および星間塵のミリ波放射過程の理解の深化に向けた研究は、代表者と分担者の梨本が中心となり、それぞれを担当する学部4年生の教育から入って計算コードの開発を進めた。彼らは0話3年度から代表者の研究室の所属する大学院生としてこれらの研究を進める予定であ理、ここまでの進捗はほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
SRONでの145GHz帯検出器アレイの作成が5月までに完了する予定である。完成後、SRON海外研究協力者が5月中に性能評価実験を行い、大きな問題がないことを確認後、テネリフェに移送しGroundBIRD望遠鏡に搭載して観測を開始する。本年度の最大の目標は、GroundBIRD望遠鏡の独創的な特徴である望遠鏡を傾けて高速回転することで、大気の揺らぎを克服して、角度スケールで20度以上の大きな構造を持つシグナルの検出に迫ることができることを実証することである。この大きな角度スケールに現れるシグナルは宇宙論的に重要であるにも関わらず大気揺らぎの影響で地上からの測定が不可能と思われていたシグナルである。GroundBIRD方式で地上から測定可能であることの実証は、大きなインパクトを与える業績となる。並行して、GrounddBIRD望遠鏡に搭載する145GHz帯の検出器素子数の飛躍的増強と220GHz帯の検出器開発のためのデザインを年度内に完成させる。このデザイン開発は、代表者の研究室に所属する修士課程の学生と分担者の鈴木の研究室に所属する博士課程の学生が代表者、分担者、SRONの研究者の指導の下中心となって進め、超伝導検出器開発の次代を担う研究者を育成する。 模擬的なCMB観測を想定した全天地図を用いてCMB shadowを取り込むことの重要性とそれを除去する手法の提案を行う成果を査読論文として発表する。我々の研究に触発され、昨年CMB shadowがCMBスペクトルの黒体からの僅かなズレの検出による初期宇宙探査に無視し得ない効果を及ぼすことが指摘された。この研究を足がかりにCMBスペクトルの歪みの研究に着手する。 海外研究協力者が運営に携わるQUIJOTE望遠鏡とDESHIMA/ASTE望遠鏡との共同観測で星間塵のアモルファス物性に迫る研究を推進する。
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Causes of Carryover |
コロナの影響でSRONおよびていで観測所への研究者派遣ができなかったため差額が生じた。
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[Journal Article] The Simons Observatory: metamaterial microwave absorber and its cryogenic applications2021
Author(s)
Xu Z., Chesmore G. E., Adachi S., Ali Aamir M., Bazarko A., Coppi G., Devlin M., Devlin T., Dicker S. R., Gallardo P. A., Golec J. E., Gudmundsson J. E., Harrington K., Hattori M., Kofman A., Kiuchi K., Kusaka A., Limon M., Matsuda F., McMahon J., et al.
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Journal Title
Applied Optics
Volume: 60
Pages: 864~864
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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