2021 Fiscal Year Research-status Report
Quest for origin of matter dominant universe by precise measurement of neutron electric dipole moment
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20KK0069
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
川崎 真介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (20712235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今城 想平 大阪大学, 核物理研究センター, 特任研究員 (10796486)
三島 賢二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20392136)
市川 豪 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (60749985)
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (90843772)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | 超冷中性子 / 中性子基礎物理 / 対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子電気双極子モーメント(EDM)探索は電磁場中に置かれた中性子のスピン歳差運動周期を精密に測定することで行われる。この測定には運動エネルギーが300 neV未満の超冷中性子が用いられる。探索感度向上のためには超冷中性子を大量に発生させること、磁場を均一にコントロールすることが必要である。 超冷中性子の生成は超流動ヘリウムを用いたスーパーサーマル法で行われるが、効率的な生成には超流動ヘリウム温度を1.2 K以下に保つ必要がある。このためのヘリウム3冷凍機は2020年度までにKEKで試験が行われた。2021年度にはヘリウム3冷凍機はTRIUMFに移送され、インストールの準備を進めた。COVID-19の流行により海外での活動が制限されたため、現地の研究者の協力のもと、研究を進めた。TRIUMFにて用意される予定であった超流動ヘリウム容器の製作や液体ヘリウム供給ラインの整備の遅れがあったため、現地での冷却試験を行うことができなかったが、その代わりに超流動ヘリウムの温度伝達関数の測定装置の設計を行った。温度計の個数や配置、その固定方法などを現地研究者と協議し、決定した。 中性子EDM測定に必要な観測システムの開発を進めている。観測システムの大部分はカナダの予算で制作されるが、目標とする探索感度を実現するための設計について、協議している。その中でも特に一様磁場環境開発のため外部磁場補償コイルの設計を進めた。2020年度に行った構造設計に基づき、詳細設計を行った。必要なコネクタやコイル線材の選定を行い、制作に必要な準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き2021年度もCOVID-19の流行が続き、海外出張や国内出張にも制限があった中での研究活動だった。オンライン会議やメールでのやり取りによってできる限り遅滞が起きないように研究を進めた。 ヘリウム3冷凍機はTRIUMFに移送され、インストールに向けた準備作業が行われている。準備作業はヘリウム冷凍機の内部構造を熟知したものが行う必要があるが、日本での性能試験に参加した現地研究者の協力のもと、オンライン会議やテレビ電話などを駆使して準備作業を続けた。輸送時にはヘリウム冷凍機は分解され、輸送によるダメージを抑えるためのサポートが取り付けられて輸出された。TRIMF着荷後、そのサポートは外され、再組立てが行われた。組み立て後の常温リークチェックでは、輸送によるダメージがなかったことが確認された。様々な制限がある中で、2022年度はヘリウム冷凍機のTRIUMF輸出という大きなマイルストーンを達成できた。 TRIMFにて準備される予定であった超流動ヘリウム容器や液体ヘリウム供給ラインの整備が世界的なロジスティクスの混乱もあり遅れている。そのため、超流動ヘリウム温度勾配測定のための装置設計等、先にできることを現地研究者とのオンラインコミュニケーションにより進めた。 当初の予定通りの渡航計画は遂行できず、また物品の調達にも支障が出る中で予定通りの研究を進めることが困難である。しかし、オンラインではあるが、現地研究者と密にコミュニケーションをとることで、計画の遅れを最小限にするように研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年5月現在、TRIUMFのあるカナダは外国人の受け入れが可能である。また、日本へ帰国する際の手続きも簡易になってきている。今後、さらに制限が解除されていくことが期待される。このため、現地に赴き、ヘリウム冷凍機のインストール作業、冷却試験、超流動ヘリウムの温度勾配測定などを推し進める。ヘリウム冷凍機はインストール後、まずは単体での冷却試験を行う。ここでは日本では用いることができなかったヘリウム3や大型ポンプシステムを用い、最低到達温度等の冷凍機単体の性能評価を行う。その後にUCN生成領域、温度勾配測定システムをインストールし、超流動ヘリウムの温度伝達関数の測定を行う。 磁場一様性の開発も現地に赴き行う。磁場補償コイルは2022年に行った詳細設計をもとに製作する。現地では磁気シールドルームの建設が始まる。磁場補償コイルはこの磁気シールドルームの外部に設置される。設置するためのフレームの一部は共通となる。磁場補償コイル・磁気シールドルームを一体化した性能評価試験を現地研究者と分担して行う。 仮に、2022年も渡航制限が起こった場合は、現地研究者の協力のもと、研究を進める。現地研究者の仕事量が増えるため、設計作業やデータ解析など、リモートでできる作業は積極的に日本国内の研究者が負担し、現地研究者の負担を軽減させる。現在も週に1度、TRIUMFを含むカナダの研究者とは定期的にオンライン会議を用いた議論を行っている。必要があれば、特定の話題を議論する小グループでのオンライン会議を行うことで、コミュニケーションの齟齬の無いよう、研究を進める。 世界のロジスティクスの混乱や半導体不足などにより、通常よりも物品の調達に時間がかかる状況が続いている。必要な物品は通常よりも早く調達するようにし、遅滞なく研究を推進する。
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Causes of Carryover |
出張に制限があったため、旅費を繰り越した。出張制限が緩和されてきているため、海外出張を再開したい。同様にカナダTRIUMF研究所で使用予定であった機器は購入を延期していたが、これらの機器については購入を進める予定である。
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Research Products
(11 results)