2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel X-ray detector to understand cosmic reionization by surveying distant AGNs
Project/Area Number |
20KK0071
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
中嶋 大 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (70570670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 博文 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (50725900)
信川 久実子 近畿大学, 理工学部, 講師 (60815687)
松本 浩典 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (90311365)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | X線天文学 / CMOS / X線イメージャ / 光子計数 |
Outline of Annual Research Achievements |
日独の共同研究により、将来の大有効面積X線望遠鏡の焦点面検出器として、高速低雑音X線撮像分光検出器を開発することが本研究の最終目的である。そのために、独マックスプランク地球外物理学研究所(MPE)の研究者が中心となりアクティブピクセルセンサDepFETあるいは高速低雑音デバイスPNCCDを開発し、並行して我々が左記センサに対応した電源回路および駆動・読み出し回路を開発する。 2023年度は、PNCCDを含むX線イメージャの信号処理を行うことが出来るバックエンド回路基板を開発した。回路ロジックは前年の2022年度に開発したものに改良を加えている。このロジックにより、最大で2048(2k)ピクセル四方のイメージセンサを最大50fps(frame per second)の頻度で撮像し、各画像中に含まれる信号電荷を検出し、その信号の座標情報、検出した時刻情報、さらに信号電荷量に比例した信号波高値を記録する。これらの機能を、FPGAとCPUが一体となったSoC (System on chip)に実装している。この基板の宇宙放射線に対する耐性を測定するため、量子科学技術研究開発機構の重粒子線がん治療装置を用いて、陽子線およびキセノンイオンをSoCに照射した。特にキセノンビームはSoCを構成するシリコンに対する線エネルギー付与が大きく、致命的な損傷に繋がりうるシングルイベント効果の耐性を測定するのに適している。実験の結果、致命的なシングルイベントラッチアップは起きなかった。一方で、SoCとデータ計測システム間の通信断絶が発生した。これは軌道上でSoCを再起動することで解消するものである。我々が想定する地球周回高軌道において、特に放射線帯を通過する際に再起動運用が必要であると考えられる。その点を除いては、十分にカメラ性能を維持できることが検証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツMPEとの協力関係により、各研究機関の分担部分の開発が進められている。ただし、当初想定していたDepFETだけでなく、PNCCDやCMOSといった他タイプのセンサでも十分に優れた科学観測が可能であることが判明した。とくに日本側の開発するバックエンド回路は、特定のセンサに特化した回路部分ではなく汎用的なロジックおよびソフトウェアの開発を先行させている。このバックエンド回路部分は特にCMOSセンサとのマッチングが優れており、本研究で開発したロジックを搭載した基板とCMOSセンサを接続することで、地球磁気圏のX線撮像分光観測に使用できるという着想を得た。地球磁気圏観測は昼側地球周辺を観測することになるため可視光バックグラウンドが顕著になるが、本研究で開発したロジックによりCMOSセンサを高速撮像させることでバックグラウンドを低減することが可能になる。そこで我々は超小型衛星搭載に向けて、CMOSセンサと本研究で開発した回路基板を用いたカメラシステムを開発し、動作試験を進めている。すでにX線撮像分光性能の実証に成功しており、査読付き論文も出版している。 一方でこの超小型衛星計画は当初の研究計画から派生的に生じたものであり、元々の研究で用いるはずであったセンサはDepFETあるいはPNCCDである。これらのセンサの開発はMPEでの開発進捗に依るところが大きい上、MPEと協力してセンサを製作しているPNdetector社との協力も必要であることが判明している。引き続き、本来の計画に則ったカメラも並行して開発を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下の2つの流れを並行して進める。 一つは、派生的に開発が進んだ、オリジナルバックエンド回路とCMOSセンサを用いた超小型衛星搭載カメラ開発の推進である。こちらは商用のCMOSセンサを用いる予定であり、本研究でこれまで開発した基板と合わせてカメラシステムがほぼ完成している。宇宙搭載に向けたテレメトリフォーマットや、カメラ筐体の開発が今後の課題である。また打ち上げロケットの振動・衝撃・音響に耐えうる設計を施すことも重要であり、これまでの開発とは異なる視点が必要となる。この点においては我々が過去の衛星開発で協働した宇宙科学研究所の先生方のアドバイスを受けながら進める予定である。 もう一つは当初より計画していた、ドイツ側開発のDepFETあるいはPNCCDセンサとバックエンド回路の接続試験である。こちらに関しては、超小型衛星開発を通して交流のある共同研究者が、PNCCDと地上用回路を用いたカメラを保有しており、そのシステムに我々の宇宙用バックエンド回路を組み込むことを検討している。一方でドイツ側は継続してPNCCDの性能向上を進めており、最終的には、最新のセンサと最新の回路を組み込みカメラとして完成させる。
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Causes of Carryover |
開発したX線イメージセンサ用の電源電圧生成回路およびバックエンド処理回路に対して、ドイツ側の開発中のセンサとの接続試験実施が出来ておらず、試験準備関連の物品購入が完了していない。来年度以降に行うこととしたため、年度使用額が発生した。
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Research Products
(7 results)