2022 Fiscal Year Research-status Report
表面上不純物粒子を対象とした動的濡れによる自発的『メニスカス・クリーニング』機構
Project/Area Number |
20KK0085
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
上野 一郎 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (40318209)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒瀬 築 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 助教 (30868740)
塚原 隆裕 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (60516186)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
|
Keywords | メニスカス・クリーニング / 表面張力 / メニスカス / 洗浄 |
Outline of Annual Research Achievements |
目標の1つである『比較的単純な構造を有する基板上構造物に液滴前縁部が接触した際のメニスカス形成と,それに伴う液膜内速度場・圧力場計測を通じた構造物周りの力場の解明』に対しては,特に異なる高さを有する円柱状微小構造物を対象とし,数値解析により定量化を実現した.微小構造物の高さによって液膜前縁部の局所的加速挙動が顕著な影響を受けること,微小構造物が充分な高さを有していない場合にはメニスカス内部に馬蹄渦が形成しないことなどを明らかにした.なお,メニスカス形成にかかる形状を実験的に高精度計測し計算の妥当性を示した.また,別の目標の1つである『目標1における微小構造物の形状・姿勢・濡れ性の影響に関する定量化』に対しては,特に球状および柱状微小構造物を対象とし,構造物に作用する力場を濡れ性をパラメータとして数値解析により定量化を行った.微小構造物周りにおけるメニスカス形成初期において,構造が有する曲率の影響により液膜濡れ上がり挙動に顕著な差違が生じることを明らかにした.また,構造物濡れ性の影響が,形状によってその発現が異なることを明らかにした.以上の内容を英文学術論文として投稿準備を進めている.なお,共同研究先に滞在してバイオ粒子を用いた実験を実施する予定であったが,covid19禍の影響により2022年度も実現しなかった.そのため,さらにもう1つの目標である『複雑な形状・物性を有するバイオ粒子を用いた高精度計測による現象の定量化,模擬実験・解析モデルへのフィードバック』に替えて楕円柱状微小構造物を対象として,実験および数値解析を行い,共同研究者らとのその結果を共有した.現在その研究結果についても,英文学術雑誌への投稿に向けて準備を開始している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,『メニスカス・クリーニング』機構の提案を大目的とし,その実現に向けて以下の4目標を掲げている.すなわち,目標1:比較的単純な構造を有する基板上構造物に液滴前縁部が接触した際のメニスカス形成と,それに伴う液膜内速度場・圧力場計測を通じた構造物周りの力場の解明; 目標2:目標1における微小構造物の形状・姿勢・濡れ性の影響に関する定量化; 目標3:複雑な形状・物性を有するバイオ粒子を用いた高精度計測による現象の定量化,模擬実験・解析モデルへのフィードバック; 目標4:バイオ粒子除去を模擬しうる解析モデル構築,である.項目(2)でも記載した通り,複数の目標に対して実験および数値解析を通じて比較的順調に成果を重ねることが出来た.特に,球状および円柱状微小構造物に対して作用する力場の差違については,共同研究者らと頻繁に遠隔での研究打合せを実施し,着実に研究を進めることが出来た.また,英文学術論文執筆に向けてもオンラインでの共同執筆環境を用いて分担作業をスムースに実現することが出来た.一方で,現地に滞在して実施する共同実験や研究打合せについては,2022年度においてもcovid19禍の影響のため実現出来ておらず,残りの研究期間を考慮しても完全な目標達成は困難と言わざるを得ない状況に直面している.研究打合せの際に議論を重ねているが,最終年度となる2023年度の研究計画において修正が必要であると双方の研究グループが認識している.
|
Strategy for Future Research Activity |
複数の微小構造物が存在する場合に注目し,それぞれの構造物に作用する力場の解析を行う.また,微小構造物の大きさや形状をパラメータとした数値解析を実施する予定である.以上の研究内容は,バイオ粒子のクリーニング機構実現に向けて不可欠な知見であり,実際のバイオ粒子を用いた実験に替わって本プロジェクトにより進めていくことを共同研究者と合意している.さらに,実験的アプローチによるメニスカス内部複雑対流場の可視化実験を目標3および4に替わる研究目標として着手している.微小構造物周りに形成するメニスカスは,これまでの実験により大きな曲率を有し,さらに時間的に変化することが明らかになっている.そのため,従来採用してきた実験系では,可視光を用いた可視化実験が屈折のために困難であることを明らかにしてきた.今年度は渡仏し共同研究者との研究打合せ,および,将来の研究構想について深く議論を行う予定である.今年度以降は,新たな光学系を導入することにより微小構造物周りの複雑対流場を可視化し,数値解析での予測結果の妥当性を検証するとともに,実際に発現している現象の定量化を行う予定である.
|
Causes of Carryover |
covid19禍により,共同研究先に滞在してバイオ粒子を用いた実験を実施する予定が実現しなかった.本共同研究の実施期間および実験内容について詳細な検討を行った結果,項目(4)に記載した研究目標を設置して研究活動を進めている.また,研究代表者および共同研究者が参加予定である界面熱流体関連の国際会議に参加し,これまでの研究成果に関する最新知見の交換および学術論文執筆準備,将来研究構想に関する議論を行う.
|