2021 Fiscal Year Research-status Report
福島県外最終処分のためのウクライナ、北欧、日本の実地層中放射性セシウムの移行評価
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20KK0092
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤川 陽子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (90178145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 省吾 大阪産業大学, 工学部, 講師 (40425054)
国分 宏城 福島県環境創造センター, 研究部, 研究員 (70792472)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 地下水 / 移行 / Chernobyl原子力発電所 / 廃棄物 / 埋立処分 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は日本における新型コロナに伴う出入国制限のため、海外の協力者の入国、研究代表者らの出国はできなかった。海外研究協力者とのZoom会議を重ね、2021年10月25-26日にはウクライナの共同研究者らの手によるChernobyl原子力発電所近傍の予備調査が実施できた。具体的には3つのサイトで計5本の井戸の採水、水位測定及びpH等の水質項目の測定、そして精密ろ過後の地下水及びろ紙の放射能分析を実施することができた。Sr-90濃度はいずれのサイトでもCs-137濃度より大幅に高く、Sr-90の地下環境での易動性を再確認した。しかし、Cs-137もすべての井戸から検出され、事故から30年余りを経てChernobyl原発事故の汚染廃棄物埋設サイトからCs-137の地下水中移行が進展している結果と考えられた。現地調査で得た試料のうち一部のろ紙は走査電子顕微鏡―エネルギー分散型蛍光X線分析による懸濁物質の分析に供した。2つのサイトでは地下水中の含水酸化鉄懸濁物に地下水中の5割前後のCs-137が吸着していた。水酸化鉄の性状はChernobyl原発最近傍のサイトでは、ステンレス合金や舗装材の混入した形態であったが、プリピャチ川の氾濫原のサイトでは微生物起源の様相を呈していた。これらの結果から現地の鉄系懸濁物に対するCs-137のin-situのKdも算出できた。上述の結果は日本水環境学会年会で発表した。 新型コロナの日本国内での感染がいったん収束した2021年11月から福島県下の調査先の処分場への訪問と情報収集、周辺状況の調査を再開した。その結果を2020年度に整備した多変量解析手法によるデータ解析に供した。現在投稿論文としてまとめているが、ディリクレ多項分布混合モデルは混合正規分布モデルに比べより妥当なクラスタリング結果を与え、人間の直観による考察を支える有益な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は2021年夏までには新型コロナワクチン接種が進み、問題はなくなると予想していた。実際には、2021年4月には研究代表者の勤務する大阪において感染拡大が起こり、調査先のウクライナの共同研究者の居住地のキエフはロックダウン状態であるとの連絡を受けた。2021年の東京オリンピック後秋ごろまで新型コロナの日本国内感染状況が悪化する事態となったが、その後鎮静化、2021年当初に再び新型コロナのオミクロン株の蔓延が起こったもののワクチンの3回目接種も始まったことから2021年度末から2022年度当初にかけてまずウクライナの調査地に赴く予定であった。しかし2月にロシアによるウクライナの軍事侵攻という予想外の事態が発生した。幸いウクライナの共同研究者は首都から非難し無事であった。Zoom会議で話し合い今後の報告性を協議している。一方、日本国内の新型コロナの状況が2021年度内にいったんは沈静化したことで、福島県と大阪の間の往来が再開でき、福島県内の既設処分場のフォローアップ研究が進展して論文も執筆できたことは一定の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年4月にはZoom会議により日本国内、ウクライナおよびスウェーデンの共同研究者と協議を行い、各地の状況及び2021年10月に行った調査結果に関する再討議、福島県内における調査状況、について意見交換を行った。ウクライナ現地では一部の研究所にロシア軍が侵入してコンピュータや測定機器の一部を持ち去ったこと、地雷や爆発物の設置によりすぐに動くことはできない状況であることが報告された。スウエーデンの共同研究者からは、2022年7月に福島県で行われる会議のため来日できそうなこと、スウェーデンに入る外国人については新型コロナに関連する規制も行動制限もないとの報告があった。ウクライナの共同研究者もスウェーデンまでであれば移動できるため、2022年夏にスウェーデンで全員が集まり現地処分場の調査を行うことを決めた。また、2021年10月のウクライナの現地調査結果をノートとして英文誌に投稿する準備を開始することを決めた。その後のウクライナ情勢を見ながら、研究期間を1年延長し、中断したChernobyl原発周辺の地下水調査を再開することを計画している。さらに、福島県下での処分場については、対象をしぼりこんで、処分場埋立地から採水個所にかけての水の動態を追うための調査を行うこととなった。
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Causes of Carryover |
ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ウクライナ現地での調査をいったん中断した。ウクライナ情勢を見極めつつ、本研究は来年度に一年の延長申請を行う計画である。スウェーデンでの調査を進めつつ、ウクライナ現地での調査備品(データロガー付き地下水位計)を購入するほか、ウクライナ現地で借用予定であったがロシア軍の侵攻により失われた水質調査分析機器等を購入し来年度にかけて現地に持参し調査を進めたいと考えている。
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