2021 Fiscal Year Research-status Report
デジタル技術と電力の融合による新たな電力ビジネスと持続可能な社会への影響分析
Project/Area Number |
20KK0106
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 美香 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50371208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七原 俊也 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00371253)
鎗目 雅 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員准教授 (30343106)
伊豆永 洋一 九州大学, 経済学研究院, 講師 (40811683)
時松 宏治 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50415717)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | エネルギー産業 / イノベーション / デジタル技術 / ビジネスモデル / 電力系統 / 生産効率性 / エネルギー消費行動 / 公共政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、エネルギー産業におけるイノベーションとその社会への影響について、政策、経済、技術の複合的視点から分析することを目的とし、以下の3つの項目を実施するものである。①電力関連スタートアップ企業のビジネスモデルの分析と制度・政策研究、②新たな技術の獲得や応用が電力供給事業の生産性に及ぼす影響の分析、③デジタル技術の導入が配電システムの保守・運用管理の効率化や費用削減などに及ぼす影響の分析。 2021年度は以下について実施した。① 持続可能なエネルギー転換に向けたデータ駆動型イノベーションの創出における可能性と課題を検討し、データ駆動型エネルギー・システムを実用化する上での課題と公共政策・制度設計の検討を行った。② 生産効率性分析モデルに企業の技術獲得への取り組み度合いを反映させる方法について検討した。また生産効率性分析への応用を念頭に、符号付きグラフ上でのクラスタリングに関する研究を実施し、新たなアルゴリズムの検討と、より一般的な問題設定に対するアルゴリズムの理論解析を行った。③ 変動性再生可能エネルギーと蓄エネルギーの導入に加え、補助電源としてディーゼルエンジンを用いたシステムの運用に関する最適化モデルの構築に関する研究、家庭部門におけるエネルギー消費行動パターンの分析を行った。また太陽光発電や風力発電が大量に連系された電力系統で懸念される電圧に係わる技術課題に対し、新たなインバータ力率の設定方法と適正な電圧維持への貢献の検討、電源脱落時の周波数変動対策としての風力発電の慣性応答の可能性に関するシミュレーション評価、電力系統の需給バランス維持困難化への対策としての経済負荷配分制御の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で取り組む3つの実施項目について以下の進捗があった。① 持続可能なエネルギー転換に向けたデータ駆動型イノベーションの創出における可能性と課題を検討し、大量・多様なデータ収集、アクセス管理、データ所有権、データ提供・共有のインセンティブ、データ・セキュリティとプライバシー確保など、新たなエネルギービジネス創出のための適切なデータ・ガバナンスの必要性を明らかにした。② 企業の技術獲得やイノベーションへの取り組み度合いを定量化し生産効率性分析モデルに反映させる方法を考察し提案した。また生産効率性分析モデルへの応用を念頭に、符号付きグラフ上でのクラスタリングに関する研究を実施し、新たなアルゴリズムを提案するとともに、より一般的な問題設定に対するアルゴリズムの理論解析を行い、その有用性を示した。③ 変動性再生可能エネルギーと蓄エネルギーの導入に加え、補助電源としてディーゼルエンジンを用いたシステムの運用に関する最適化モデルの構築に関する研究を行った。家庭部門におけるエネルギー消費行動パターンの分析では予備的結果を得た。太陽光発電や風力発電が大量に連系された電力系統で懸念される電圧に係わる技術課題に対し、新たなインバータ力率の設定方法と適正な電圧維持への貢献を明らかにした。また電源脱落時の周波数変動対策として、風力発電の慣性応答の可能性に関するシミュレーション分析を行い、慣性応答と定格出力の関係を示した。電力系統の需給バランス維持困難化への対策としての経済負荷配分制御について分析し、出力変動の特性と対応策を議論した。以上の実施項目における成果を基に論文の執筆や学会発表を行ったことで、今年度に予定した研究をほぼ実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は本研究課題の3つの実施項目について以下の分析を進める。① 持続可能なエネルギー転換に向けたデータ駆動型イノベーションの創出における可能性と課題を詳細に検討するとともに、データ駆動型エネルギー・システムを実用化する上での課題と公共政策・制度設計のための具体的論点について明らかにする。② デジタル技術やAIなどを活用した新事業の創出や獲得によるビジネスモデルの変革、および経営システムへの実装を通じた企業のイノベーションへの取り組み度合いを定量化し、エネルギー企業の生産効率性分析モデルに対する手法面での拡張と実証分析を進める。効率性分析に応用可能な数理モデルのアルゴリズムの開発とその理論解析を継続する。③ 変動性再生可能エネルギーと蓄エネルギーの導入に関するシミュレーション分析を拡張するとともに、家庭部門におけるエネルギー消費行動パターンの分析についてこれまでに得た予備的考察を基に詳細分析へと拡張する。また、太陽光発電や風力発電が大量に連系された電力系統で懸念される電圧に係わる技術課題、周波数変動対策、電力系統の需給バランスの維持困難化への対策について、技術的・制度的解決策の導入による効果のシミュレーション分析の継続と拡張を行う。
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Causes of Carryover |
主に海外調査および国際学会発表のための国外出張の延期と海外研究者の招聘の延期により次年度使用額が生じている。状況を見ながら研究遂行に必要な予算執行を進めていく。
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Research Products
(9 results)