2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the molecular mechanism of Ca signaling mediated by plant K channels
Project/Area Number |
20KK0127
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 泰寛 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80590207)
辻井 雅 東北大学, 工学研究科, 助教 (30865887)
齋藤 俊也 東北大学, 工学研究科, 学術研究員 (00825226)
ELLEN 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (40870176)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
|
Keywords | イオン輸送体 / Ca / 植物 / シロイヌナズナ / バイオスティミュラント |
Outline of Annual Research Achievements |
植物シロイヌナズナに緑茶を噴霧すると植物の生育状態に変化が観察された.さらに乾燥環境においた場合は,緑茶の噴霧により乾燥への感受性が上昇することが明らかになった.緑茶成分が乾燥の感受性を高める化合物として作用したことに加えて,緑茶成分の水溶性分子が気孔の外部から影響を与えた.申請者は,緑茶の主成分がカテキン類であること,耐乾燥性に関わり外界と接点の孔辺細胞の原形質膜で機能することから,カテキン類がKチャネルに影響を与えると推定して電気生理学的測定法によりカテキンの効果を検討した.主要なカテキンとして8種類を用いてKAT1の阻害度合いを評価した結果,ガレート基を有するカテキンで阻害活性が認められた.また,KAT1とヘテロ四量体を構成するKAT2も阻害することが明らかとなった.また,孔辺細胞でK排出系として機能するGORKも影響を受けることが明らかとなった.膜電位センターを有するKチャネルのみが影響を受けるか否かを動物のKチャネルを用いて検討したところ,膜電位センサーを有するShakerBで阻害活性が検出された.CBL-CIPK複合体の組み合わせの中から,イオン輸送体の調節を行う分子を見いだすために,酵母の共発現系の構築を行った.3種類のプラスミドを用いて,遺伝子を共発現させた酵母を用いて,複数のイオン輸送体の輸送活性調節に関わる組み合わせを酵母の生育テストを行った.中には,CBL-CIPKの2つの組み合わせだけでも優位にK輸送活性変異を相補してしまう場合が見いだされ,それらはアッセイから除外した.昨年度から進めている阻害剤の官能基を置換した類縁体を用いて,イオン輸送体活性の影響を電気生理学的手法により検討を行った.6つの有機合成化合物を調べているが,もとの化合物よりも強力に阻害する化合物は現在までのところ検出されていない.今後,さらに類縁体の評価をすすめる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑茶の中から気孔開度を調節する分子を単離することができた.阻害活性を有する分子の取得は容易ではないと考えており,実際,多くの化合物のスクリーニングの中から,天然の化合物のカテキン類がKAT1という気孔開閉に関わるKチャネルを阻害することが分かった.Kチャネルの阻害は,その上流および下流で機能するCaチャネルの阻害や活性化にも影響を与える可能性が高い.細胞内Caの一過的上昇に関して検討しする予定である.さらに,今回得られたKチャネル阻害剤は,膜電位の変化の制御にも直接関係することから,膜電位変化の調節に関わっているかについて調べることができるようになった.遺伝学からだけでは検出できない現象の発見につなげることをめざして,阻害剤添加による瞬時の変化を観察する.さらに,気孔開口に作用するのか,閉鎖に関わるかのどちらかを植物を用いた気孔開度測定や蒸散の測定で検討する.酵母に複合体を導入して,検討を行いKチャネルの活性化を明らかにすることができた.数が限られており,さらに検討を加えることでCBLとCIPKの組み合わせの特徴が明らかになる可能性があることから,さらに検討すすめることの有用性が高まった. 阻害剤の官能基を置換した類縁体は,有機合成を用いるためその類縁体の取得には時間がかかるが,着実に機能解析すすめることができた.阻害効果の高い化合物を取得する目的の他に,阻害効果が低い場合でも,化合物の性質から阻害活性を有する官能基を絞り込む.これにより,官能基置換の箇所を明らかにすることで,より効率的な阻害剤の開発と構造活性相関の知見を獲得する.
|
Strategy for Future Research Activity |
気孔開度調節に関与するカテキン類のKチャネル阻害効果を検討する.現在進行中の電気生理学的測定によるイオン輸送体活性の特性を明らかにするとともに,その特性が植物の生理反応や表現型にどのようにつながるのかを検討する.Costa教授が開発中の細胞内Ca変動測定を今回見いだしたKチャネル阻害剤添加時における効果を検討する.ABAを孔辺細胞に添加すると気孔の閉鎖が誘導されることから,ABAが気孔閉鎖を誘導する際に機能する情報伝達系の中で,孔辺細胞のKチャネルがどの箇所で機能するのかを明らかにする検討をする.これまで,KチャネルはABAが受容体に結合した後に,Caの一過的上昇が生じ,その後に陰イオンチャネルの開孔とともに外向きKチャネルの開孔と内向きKチャネルの閉孔が生じることが分かっている.一方,ABAの受容体が結合と同時にKチャネルが関与することは知られていない.乾燥ストレスという物理現象がきっかけで生じるKチャネルの活性化の有無に関して,カテキン類縁体を用いることによって明らかにすることを試みる.酵母によるKチャネルの活性化に関わるCa結合タンパク質のCBLとリン酸化酵素のCIPKの組み合わせの同定をすすめる.組み合わせの特徴を明らかにするとともに,そのKチャネルがCaの有無によって制御される機構の解析をはかる. Kチャネル阻害活性を有する類縁体を取得して,植物における効果を検討する.気孔閉鎖誘導および乾燥耐性に関して,検討するとともに,孔辺細胞のCa一過的上昇へどのような影響を与えるのかを解析する.
|
Research Products
(8 results)
-
-
-
-
-
[Presentation] 植物K+トランスポーターによる 他イオン吸収の調節2021
Author(s)
山梨太郎, 東大起, 内山剛志, 池田隼人, 菊永英寿, 須田利美,佐々木渉太, 高島圭介, 金子俊郎, 山上睦, Ellen, 辻井雅, 石丸泰寛, 魚住信之
Organizer
日本生物工学会北日本支部2021 年度
-
[Presentation] 気孔開閉を誘導する化合物の開発2021
Author(s)
筧太心, 鈴木喬太, 佐藤奏音, 有澤美枝子, 熊田佳菜子, 谷井沙織, 古田未有, 斎藤望, 水野太郎, 元木大介, 河野優, 石丸泰寛, 魚住信之
Organizer
第73回日本生物工学会大会
-
-