2020 Fiscal Year Research-status Report
Monitoring of plasmid behaviors in phytosphere in different climate zones
Project/Area Number |
20KK0128
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
新谷 政己 静岡大学, 工学部, 准教授 (20572647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水口 千穂 (鈴木千穂) 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (10733032)
原 啓文 長岡技術科学大学, 学内共同利用施設等, 客員研究員 (80511071)
野尻 秀昭 東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (90272468)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | プラスミド / 接合伝達 / 宿主域 / 植物体圏 / 気候帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミドは種々の遺伝子群を搭載し,異なる細菌間を接合伝達により移動する遺伝因子で,細菌の進化・適応を促進し,新たな形質をもつ細菌を出現させる.また,世界各国の農作物を含む植物の葉圏・根圏(植物の地上部を葉圏とし,地下部を根圏とする.これらを合わせて植物体圏とよぶ)が,プラスミドや薬剤耐性遺伝子の温床となっていることが示されつつある.しかし,いずれも発見例にとどまり,それらがどのように伝播するのかという実態に迫る研究は皆無である.そこで,日本の火山灰土壌を用いた農場の土壌や,植物からのプラスミドキャプチャリングを実施し,複数の接合伝達性プラスミドを得た.さらに,プラスミドの種類について調べたところ,IncP群とPromA群というプラスミドが含まれることが判明した.また,化学肥料や,稲わらのみから作出した堆肥の有無によって,得られるプラスミドの数に変化が認められた.一方,ドイツおよびマレーシアを訪問し,現地で実験を行う予定であったが,新型コロナウイルスの感染状況が好転せず,渡航ができなかった.このため,海外に参画研究者が滞在する形でのプラスミドキャプチャリングの実施には至らなかった.そこで,先に植物体圏を伝播すると示唆されたIncP群プラスミドとPromA群プラスミドについて,プラスミド上に緑色蛍光タンパク質を発現する遺伝子を挿入し,その伝播を追跡可能にするシステムを構築した.また,ドイツ側との打ち合わせを経て,モデル植物としてレタスを選抜し,日本側にも栽培・飼育するシステムを整備した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染状況が好転しなかったため,当初計画していた海外への渡航や,現地に滞在しての実験の実施はできなかった.しかし,既に植物体圏を伝播しているプラスミドについては,一部その種類の同定ができた.現在,塩基配列の決定に向けた準備を進めている.また,ドイツ側との先行する共同研究によって,ドイツの土壌由来のプラスミドについては,複数のプラスミドの塩基配列を決定済みである.これらプラスミドと類縁のプラスミドについて,伝播現象を追跡するためのシステムが構築できたこと,モデル植物の栽培システムも確立できた点は,予定より早く遂行できた.国際共同研究としては,定期的にドイツ側とはメールを通して連絡・打ち合わせをしている.また,相手国側のSmalla博士を共同の研究代表として,ドイツの7か所の研究チームと,メキシコの1チームを加えた新たなプロジェクトが今秋より開始する見込みとなった.以上から全体としてはおおむね順調と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
日本・ドイツ・マレーシアという異なる気候帯・土壌環境における植物体圏について,以下の3点を行う. (i)引き続き,プラスミド上の薬剤耐性遺伝子の有無や接合伝達能を指標にして気候帯・土壌の異なる植物体圏からプラスミドを収集する(研究代表者・新谷,研究分担者・原).収集後のプラスミドの全塩基配列を明らかにし,各植物体圏の試料に,どのような種類のプラスミドが,どの程度存在するのかを明らかにする(研究代表者・新谷,研究分担者・野尻). (ii)ドイツ側の研究機関と共同でモデル植物体圏を構築し,植物の週齢や施肥の有無によって,各プラスミドの存在量が変化するのかどうか検証する.プラスミドの存在量は,PCR-サザンブロット法や,リアルタイムPCRを用いて行う(研究代表者・新谷,相手国共同研究者・Smalla). (iii)プラスミドの伝播を追跡可能にするシステムを導入したIncP群・PromA群プラスミドについて,モデル植物体圏では,どのような微生物に接合伝達するのかという宿主域を明らかにする.本項目は,フローサイトメトリーとセルソーターや,蛍光顕微鏡を用いて行う(研究代表者・新谷,研究分担者・原,水口,相手国共同研究者・Smalla). 以上を実施して異なる気候帯・土壌に生育する植物の葉圏と根圏(植物体圏)におけるプラスミドの伝播の実態を明らかにする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延に伴い,海外に渡航ができなかった分,旅費として計上した金額を使わなかったため.次年度に引き続き旅費として使用する予定である.
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Research Products
(7 results)