2021 Fiscal Year Research-status Report
環北極北方林における枯死木分解に関わる菌類群集と倒木更新の生物地理
Project/Area Number |
20KK0139
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 博俊 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10635494)
松岡 俊将 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 非常勤研究員 (70792828)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | トウヒ / 枯死木 / 分解 / 菌類 / 褐色腐朽 / 白色腐朽 / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北半球の広大な北方林全域を対象として、枯死木の分解と森林の更新に関わる菌類群集の環境応答を明らかにすることにより、気候変動が北方林の分布や炭素収支に与える影響を予測することを目指す。この目的達成のため、北欧、ロシア、北米の各国の研究者の協力のもと野外調査を行うとともに、菌類の環境DNA解析と木材の化学成分分析、生物の分布予測モデルなどのエキスパートからなる国際共同研究チームを編成する。野外調査・分析から得られたパターンを室内培養実験およびモデリングと組み合わせることで、気候の変化が枯死木の菌類群集を変化させ、それが枯死木の分解パターンや枯死木上の樹木実生更新に影響するメカニズムと因果関係を明らかにする。本研究は、現在発展の著しい環境 DNA解析技術を世界にさきがけて地球規模の木材腐朽菌群集の解析に適用するだけでなく、気候変動下における全球レベルの炭素動態、森林生態系の持続性といった様々な学際領域へと融合・発展する可能性を持った国際共同研究である。 2021年は、コロナウイルスの影響により、2020年に引き続き海外調査を進めることができなかった。代わりに、関連するヨーロッパでのサンプルの解析を進めた。その結果、ドイツトウヒ枯死木のリグニン残存率に気温との正の相関が見つかった。また、枯死木から抽出したDNAサンプル中の菌類ITS領域のメタバーコーディングを行った結果高頻度で検出された菌類のうち、褐色腐朽菌のツガサルノコシカケの出現は気温と正の相関、白色腐朽菌のコフキサルノコシカケの出現は降水量と正の相関が見られた。以上から、ヨーロッパのドイツトウヒ倒木の分解は気候条件の影響を受けており、温暖なほどリグニンが蓄積しやすい傾向があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヨーロッパのサンプルのうち、ギリシャからチェコにかけての6カ国のサンプルの分析が終わった。新しいサンプルの採取については、コロナウイルスにより海外渡航が不可能だったため、予定していたアメリカおよびロシアでのサンプリングが全くできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
スカンジナビア半島由来のサンプルの分析、解析を進める。また、2022年の夏にはアメリカに渡航して野外調査をする予定である。ミネソタ大学のイタスカ生物センターに滞在し、現地のシロトウヒ、クロトウヒの倒木を対象としてサンプリングを行う。気温・降水量の勾配に沿ってサンプリングをすることにより、気候条件とトウヒ枯死木の菌類群集、分解、倒木上の実生更新に関するデータを採取する予定である。ロシアについては、調査はおろかサンプルを採取依頼して送ってもらうことも難しそうなので、現在は状況が改善されるのを待つしかないと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していたアメリカへの調査旅行が、コロナウイルスのためにまだできていない。この旅費・謝金およびサンプルの分析費用を次年度に繰り越し、使用する。
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Research Products
(1 results)