2022 Fiscal Year Research-status Report
マングローブ域に隠された巨大な生物生産システムの解明;ミャンマーでの実証
Project/Area Number |
20KK0141
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 一彦 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30265722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 静夏 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10878276)
作野 裕司 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20332801)
豊川 雅哉 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (60371837)
劉 文 京都大学, 地球環境学堂, 特定助教 (60839900)
圦本 達也 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (90372002)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | マングローブ / ミャンマー / 牡蠣 / 基礎生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,実渡航による現地調査を行うために,まず9月に研究代表者一名が現地を訪れ,情勢の観察と在ヤンゴン日本大使館との調整を行った上で,2023年1月に研究分担者によるチームでミエックを訪れ,現地調査を実施した。ミエック市北部のPanataung河口域に7点の調査点を取り,表層堆積物を二枚貝類の餌料生物の推定と生息環境の解明に向けてパリノモルフ群集を明らかにする目的で採取した。試料は塩酸,フッ化水素酸処理を終え,顕微鏡観察を行っているところである。別途実施したグラブサンプラーによる採泥調査では底生生物を調査した。目合2 mmのフルイ上には多毛類や線虫などが僅かに採集された。二枚貝類は殻は入るものの生きた個体は採集されなかった。一方,現地海域では地播きによる粗放的なハイガイ養殖が拡大しており,沿岸の生物生産システムに大きな影響を与えていると考えられる。別に,衛星GCOM-Cを念頭にした現場データを活用したChla・水温・SS推定アルゴリズムの検証を行った。また,沿岸への土砂流出に関連して,雨量分布を知るために衛星降雨レーダーによる雨量データ(GSMaPrain)の検証も行った。これら1月の現地調査に加え,ミエックに常駐する研究者によって定期的に採集されたマングローブ底泥の原生生物群集組成と,養殖ガキの胃内要物の比較を,次世代シーケンサーを用いた網羅的解析により実施した。その結果, Panataung川の上流部のマングローブ底泥上にはOpisthokonta, Stramenopileが優占し,河口域では後者が優占していた。養殖ガキ(イワガキ)の胃内要物からはOpisthokonta,特に酵母類が多く検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症による出国・入国制限は緩和されたが,ミャンマー国内の政治情勢が混乱しており,予定していた頻度での現地調査ができていない。2022年度は,事前の下見,現地情勢の注意深い観察,ミャンマー政府教育省との直接交渉を経て,1月に現地調査を行ったが,ミエック市の内陸部では武力衝突が発生しており,日本人グループが直接訪問しての現地調査は今後は難しいと考えている。むしろ,現地大学および現地人博士学生(広島大学学生;出国制限により渡日できず)によって定期的に採集される試料を日本で分析することに重きを置く方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年1月に現地で得た試料を用い,二枚貝類の餌料生物の推定と生息環境の解明に向けてパリノモルフ群集の解析を継続する。また,また,昨年度にマガキ(Crassostrea gigas)のトランスクリプトーム解析結果からセルラーゼと思われる全長配列を6種得て,イントロン増幅が認められた5種について内源性セルラーゼ遺伝子であることを確認した。この成果を活用し,ミャンマーのカキ(イワガキ)を対象にこれら内源性セルラーゼ遺伝子の発現を定量評価する予定である。 今年度に衛星GCOM-Cを念頭にした現場データを活用したChla・水温・SS推定アルゴリズムの検証を終えたので,今後は同衛星を活用した現地情報取得に注力する予定である。 マングローブ底泥の原生生物群集組成と,養殖ガキの胃内要物の比較のために,引き続き現地研究者による定期的な試料採集を実施し,日本に持ち帰った上で,次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を継続する。
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Causes of Carryover |
予定していた現地調査を縮小せざるを得ない状況だったため,旅費分と試料解析費が大きく残ったため。その一方,現地大学により試料を定期的に採集し,それを日本で次世代シーケンサーを用いて分析する体制が整ったので,2023年度はこの部分に助成金を主に使うとともに,成果を集中的に出すためにポスドクの雇用を考えている。
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