2023 Fiscal Year Research-status Report
カンボジア・メコン川流域における安全・安心な淡水フグ食の創造にむけた超学研究
Project/Area Number |
20KK0142
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (70292860)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 修 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40232037)
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
柳下 直己 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 教授 (50434840)
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
太田 貴大 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (30706619)
宇都宮 譲 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60404315)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
Keywords | カンボジア / メコン川流域 / 淡水フグ / フグ毒 / 養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
「課題1: 淡水フグの毒性変化の実態解明」については、昨年度から使用開始した毒性検査キットについて、既知量のSTXと検査キットの呈色度合の関係から検量線を作製した。また、頻繁に採集される形態的に異なる2種類(AタイプとBタイプ)のフグについて、毒性プロファイルを精査し、タイプや生息域により毒の蓄積部位や蓄積量が異なること、Aタイプでは卵巣の毒濃度と生殖腺体指数(GSI)の間に強い正の相関が認められること、などを示すとともに、形態形質の測定と遺伝子配列解析を開始した。「課題2:食物連鎖を通じた淡水フグの毒化機構解明」については、前述の2種類のフグの消化管内容物比較を開始した。Aタイプの消化管内容物は極めて微量で、顕微鏡下での由来判別は困難だが、Bタイプには高い頻度で小型魚類や淡水エビ等の断片が見出された。さらにAタイプの消化管内容物のmtCO1領域のアンプリコン解析に着手した。また、フグ採取地点付近の環境試料を対象に、現地で実施可能なシアノバクテリアの光合成色素分析やDNA抽出などに着手した。「課題3: 淡水フグ食のメンタリティー解明」については、現地住民によるフグ喫食に関する昨年度までの調査結果を取りまとめ、フグ喫食の嗜好性と、性差や地域差との関連性などを解析した。「課題4:食用に向けた無毒化淡水フグ養殖の試行」については、野外で捕獲したフグを屋外水槽で飼育期間(約2カ月)に、フグ個体サイズ、体重、毒性を計測した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究開始当初(令和2年10月)から令和3年度末まで、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、渡航を前提とした研究計画を遂行できなかったが、令和4年度になり、ようやく現地調査を実施して、進捗状況は改善された。令和5年度はABSに準じて日本に持ち込んだフグ試料について、毒性とともに食性に関する知見を得つつある。一方、現状のABS文書には微生物試料の持込に関して未記載のため、特に環境試料の微生物解析は未だに滞っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1については、これまでに採取したフグ個体試料をもとに、頻繁に採集される形態的に異なる2種類のフグ(AタイプとBタイプ)について、形態形質の測定と遺伝子配列解析を進めて、分類的な混乱を整理するとともに、毒性の詳細な分析を行い、種毎の毒性プロファイリングリスト(各部位の毒量、毒組成、それらの地域差、季節変動などを明確化したもの)の作成を目指す。課題2については、A、B両タイプのフグ消化管内容物についてmtCO1領域のアンプリコン解析を進めるとともに、フグおよび他の水生動物の炭素・窒素安定同位体比分析にも着手する。また、現地で実施可能なシアノバクテリアの光合成色素分析やDNA抽出を進める。課題3については、現地住民によるフグ喫食に関する昨年度までの調査結果を取りまとめ、カンボジア・クラチエ州の農漁村における魚食のメンタリティと社会インフラレベルでの受容状況を明らかにする。課題4については、フグ種苗を得るために必要な成熟雌雄の効率的な捕獲・飼育手法を検討する。
|
Causes of Carryover |
研究開始当初(令和2年10月)から令和3年度末まで、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、渡航を前提とした研究計画を遂行できなかったが、令和4年度の現地調査によりカンボジアからフグ試料を国内に持ち込み、令和5年度はこれらの試料について毒性や消化管内容物の解析に着手した。一方、微生物群集解析のための環境試料の日本への持込については、ABS文書の改訂作業が相手方の都合により停滞しており、未だに実施できていないため、遅延している解析の諸費用の一部を次年度に繰り越した。次年度は、早期に試料の日本への持込を実現し、解析データを得る。
|
-
-
[Presentation] カンボジア産淡水フグPao属2種の毒性プロファイル2023
Author(s)
竹岡順史, 朱 鴻辰, 和田 実, 井口恵一郎, 宇都宮譲, 大庭伸也, Laymithuna Ngy, 土井啓行, 山田明徳, 荒川 修, 高谷智裕
Organizer
令和5年度日本水産学会秋季大会