2021 Fiscal Year Research-status Report
On-grid biochemistry: Structural analyses of G-quadruplex-telomere factor complexes
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20KK0157
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 所長 (40229349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 賢治 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 研究員 (00250217)
井口 智弘 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 研究員 (10783516)
加納 豊 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (90450593)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | Rif1 / オリゴマー / グアニン4重鎖 / 電子顕微鏡 / 単粒子解析 / クロマチンループ / テロメア / シェルタリン |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、G4(グアニン4重鎖)DNAと全長Rif1オリゴマーとの複合体の微細形態をクライオ電子顕微鏡による単粒子解析で決定することを目指し、マウスRif1(2,418アミノ酸)、及び分裂酵母Rif1(1,400アミノ酸)の大量精製に着手した。しかし、両者とも全長タンパク質として大量精製することは非常に困難であった。そこで、マウスRif1についてN末端領域(NTD, 1,151アミノ酸)とC 末端領域(CTD, 299アミノ酸)の間にある長い天然変性領域(LID, 968アミノ酸)を欠失させたRif1-NC(NTD+CTDの意)を293T細胞から大量精製した。Huilin Li 教授のラボでこれを電顕観察・単粒子解析を実施したところ、Rif1-NCはオリゴマーのようには見えたが、正確に何量体なのかは断定できず、分子形態の確定にも至らなかった。最近、マウスRif1-NCよりもヒトRif1-NCの方が発現効率が良いことが判明したため、その精製を進めている。 一方、分裂酵母のRif1については、全長(1,400アミノ酸)を293T細胞に発現させると除去困難な分解産物が大量に蓄積してしまったが、そのN末端92アミノ酸を欠失させたRif1を発現させるとその問題がかなり軽減することを見出した。このN末端欠失体を精製し、現在Huilin Li 教授のラボで電顕観察・単粒子解析を進めている。 また、最近私達は分裂酵母Rif1のC末端44アミノ酸領域のみでテトラマー(四量体)を形成することを見出した。このテトラマー化部位を含む複数の部分欠失体を大腸菌から精製し、現在Huilin Li 教授のラボで電顕観察・単粒子解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、マウスRif1も分裂酵母Rif1も、全長タンパク質として高度に精製することは非常に困難であり、これが研究の進捗が遅れた第一の要因である。全長Rif1の代わりにマウスRif1-NCオリゴマーを精製することに計画変更した後も、その十分な精製には多くの労力と時間を要した。これが研究の進捗が遅れた第二の要因である。また、進捗が遅れた理由には以下のような事情もある。最初に電顕解析に供したRif1-NC標品には不定形凝集体が多かったため、凝集し難いRif1-NCを提供して欲しいとLi 教授から要望された。Rif1-NCは低塩濃度では細胞から抽出され難いため、それまでは高塩濃度抽出液から精製してきたが、低塩濃度抽出液から精製すれば凝集しないのではないかと期待し、低塩濃度抽出液と高塩濃度抽出液の双方からマウスRif1-NCを精製し直した。しかしながら、Li 教授のラボによる電顕観察・単粒子解析の結果、どちらのRif1-NCもオリゴマーのようには見えるが、残念ながら正確に何量体なのかは断定できず、分子形態の確定にも至らなかった。また、分裂酵母Rif1についても、全長タンパク質を発現させるとN末端とC末端を両方含む奇妙な分解産物(除去困難)が大量に蓄積してしまい、その問題を解決するのに相当時間を要した。結局、そのN末端92アミノ酸を欠失させることでその難題解決の糸口を見出したものの、依然として発現量や精製効率は必ずしも満足できる状況ではない。このような複数の事情で研究全体の進捗にやや遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスRif1-NCオリゴマーの分子形態の確定には至らなかったが、最近、マウスよりもヒトRif1-NCの方が293T細胞での発現効率が良いことが判明したため、その大量精製を進めている。ヒトRif1-NCが十分に精製でき次第、電顕観察・単粒子解析に供する計画である。また、N末端92アミノ酸を欠失した分裂酵母Rif1、及び、そのC末端のテトラマー形成ドメインについては、現在Huilin Li 教授のラボで電顕観察・単粒子解析を進めているところである。もし解析結果が思わしくない場合には、Li 教授らと相談のうえ、G4オリゴヌクレオチドDNAを結合させた各Rif1タンパク質の電顕解析を実施する。多くのタンパク質複合体で、リガンド結合によってその構造が安定化する事例が知られており、Rif1の場合もG4 DNAの結合による構造安定化を期待したい。 一方、今後”On-grid biochemistry”解析に必要となるテロメア複合体(シェルタリン)構成タンパク質等を限られた労力で十分に精製するためには、発現用細胞でのトランスフェクション効率/発現効率を大幅に向上させる必要がある。そのため、細胞やトランスフェクション試薬/条件の最適化を図るとともに、発現タンパク質のN末端側に付加するタグを発現増強効果が見込まれる種々のタグに変更して強制発現させる。さらに、分裂酵母とヒトのRIf1C末領域ポリペプチドの精製に成功し、両親媒性のコイルドコイルド構造を形成することを強く示唆する結果を得た。また、C末変異体も同様に精製を進めており、これらの構造を解析することによりC末の多量体形成、G4との相互作用の構造的基盤を明らかにできるものと期待している。併せて、高速AFMを用い、全長Rif1、IDPを欠失したNCポリペプチドの分子動態の解析も進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、実験遂行に障害が出て、構造解析が思った速度で進まなかった。また、マウスRif1-NCタンパク質は、解析結果が思わしくなかったので、ヒトRif1-NCタンパク質の精製を多ない、Li博士に送付した。 コロナ禍で、相手側研究者への訪問ができずに旅費、また雇用もできなかったため人件費、謝金がのこった。 今後、さらに全長Rif1も含めて、大量精製をするために、DNA精製のキット、 血清、培地、タンパク精製のためのレジンなどの購入に充てる。また、状況が落ち着いたならば、Li博士を訪問し、構造解析の実験を遂行する。そのための旅費、滞在費にも充てる。
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Research Products
(13 results)