2021 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiology and therapeutic strategy of autoimmune hypertriglyceridemia.
Project/Area Number |
20KK0190
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村上 正巳 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30241871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 克行 女子栄養大学, 付置研究所, 客員教授 (10444051)
常川 勝彦 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (30436307)
青木 智之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60710580)
長澤 拓海 群馬大学, 医学部附属病院, 技術職員 (70890648)
木村 孝穂 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90396656)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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Keywords | 脂質異常症 / 自己抗体 / トリグリセライド / リポ蛋白リパーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
トリグリセライド(TG)を多く含むTG-richリポ蛋白はリポ蛋白リパーゼ(LPL)によって代謝される。LPLは脂肪細胞や筋細胞で産生され、毛細血管内皮細胞膜上に存在するアンカー蛋白GPIHBP1に結合して血管内腔に輸送され、TG-richリポ蛋白を代謝する。我々は、GPIHBP1の病態生理学的役割を解明する目的で、ヒト血漿中GPIHBP1の免疫測定法を開発したが、開発の過程で、GPIHBP1に対する自己抗体の存在により血中LPL活性が低下し、著明な高TG血症を来した症例を発見して報告した。 本研究において、GPIHBP1自己抗体による高TG血症の症例を新たに発見したが、血中GPIHBP1濃度の低値例だけでなく、高値例が存在することが明らかとなった。その原因として、自己抗体の認識するGPIHBP1のエピトープの違いにより免疫測定法に及ぼす影響が異なる可能性を想定し、GPIHBP1の別の部位を認識するモノクローナル抗体を作製し、新たなGPIHBP1測定法を開発した。これまでの測定法ではGPIHBP1が低値であった例において、新たなモノクローナル抗体による測定法により、GPIHBP1が高値となることが明らかとなり、GPIHBP1が自己抗体と結合した状態で血中に存在する可能性が示唆された。 さらなる症例の解析の結果、GPIHBP1のLPL結合部位として重要なLU domainを認識する自己抗体の他にacidic domainを認識する自己抗体を有する症例を新たに見出した。以上の知見に基づいて、米国UCLAとの共同研究により、GPIHBP1のacidic domainを欠損したマウスを作製したところ、LPLのヘパラン硫酸プロテオグリカンからの解離が障害され、高TG血症となることが明らかとなり、acidic domainに対する自己抗体の高TG血症への関与が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の研究施設との共同研究により、GPIHBP1自己抗体による高TG血症の症例を新たに発見したが、血中GPIHBP1濃度の低値例だけでなく、高値例が存在することが明らかとなった。その原因として、自己抗体の認識するGPIHBP1のエピトープの違いにより免疫測定法に及ぼす影響が異なる可能性を想定し、GPIHBP1の別の部位を認識するモノクローナル抗体を作製し、新たなGPIHBP1測定法を開発した。これまでの測定法ではGPIHBP1が低値であった例において、新たなモノクローナル抗体による測定法により、GPIHBP1が高値となることが明らかとなり、GPIHBP1が自己抗体と結合した状態で血中に存在する可能性が示唆された。 さらなる症例の解析の結果、LPL結合部位として重要なLU domainを認識する自己抗体の他にacidic domainを認識する自己抗体を有する症例を新たに見出した。以上の知見に基づいて、米国UCLAのYoung博士との共同研究により、GPIHBP1のLPL結合部位として重要なLU domainでなくacidic domainの欠損したマウスを作製したところ、LPLのヘパラン硫酸プロテオグリカンからの解離が障害され、高TG血症となることが明らかとなった。GPIHBP1のacidic domainを認識する自己抗体が、高TG家血症の病態に関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
自己免疫性高トリグリセライド(TG)血症の病態解明に向け、本研究において開発した新たなものクローナル抗体によるGPIHBP1測定法を用いて、自己抗体の認識するGPIHBP1のエピトープと高TG血症の病態の関連について検討を進める。 これまでマウスLPL濃度の測定法が存在しなかったためにマウスにおけるLPLによるTG代謝の研究に進展がみられなかったが、我々はモノクローナル抗体を用いたマウスLPLの免疫測定法を確立することに成功した。我々が開発したマウスLPL免疫測定法によって野生型マウスとGPIHBP1欠損マウスにおけるLPL濃度をヘパリン投与前と投与後で検討を行ったところ、GPIHBP1欠損マウスにおいて野生型マウスに比較してヘパリン投与前と投与後においてLPL濃度の有意な低下を認めた。本研究において、マウスLPL測定法を用いた検討により、GPIHBP1のLU domainとacidic domainの自己免疫性脂質異常症の病態における役割の解明を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、出張ならびに研究の制約があったため、次年度に使用することとなった。
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