2021 Fiscal Year Research-status Report
人種間の他者理解脳内ネットワーク解析と覚醒下手術への応用
Project/Area Number |
20KK0206
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中田 光俊 金沢大学, 医学系, 教授 (20334774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 雅史 金沢大学, 医学系, 講師 (50525045)
中嶋 理帆 金沢大学, 保健学系, 助教 (60614865)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的認知機能 / 脳機能局在 / 覚醒下手術 / 画像統計解析 / メンタライジング |
Outline of Annual Research Achievements |
相手の表情やしぐさ、声の調子、社会的背景などを加味して、他者の感情や考え、行動を推測する能力を社会的認知機能という。脳神経外科において、社会的認知機能を温存する手術法の確立が世界的課題となっている。本研究では、フランスの共同研究機関と協同し、異なる人種間の“他者を理解する”脳内ネットワークの共通点と差異を明らかにし、世界標準の社会的認知機能温存型覚醒下手術を確立する。 2021年度は感情理解に関わる脳機能局在と皮質下のネットワークを解析した。ヒトの基本的感情とされる喜びと悲しみに着目し、これに関わる脳領域を同定した(Nakajima, Nakada. in revision)。結果、喜びには前頭前野後方、悲しみには前頭葉内側眼窩部が関与しており、両領域には構造的な結合が存在した。喜びと悲しみの感情理解にはトレードオフの関係があり、一方の領域の損傷により一方の感情の識別能力が低下するともう一方の感情の識別能力は上昇した。従って、同定された皮質・皮質下領域は悲しみと喜びの感情理解のバランスを保つ役割を果たす領域であると考察した。悲しみと喜びは世界共通の感情であることから、同じ感情理解のメカニズムと皮質・皮質下構造が欧米人においても存在すると推測しており、今後検証したいと考えている。また、本研究のステップの一つである「アジア版の術中メンタライジング検査の確立」と関連して、Herbet准教授と共に、メンタライジングに関わる脳領域をレビューし、現在報告されている術中モニタリングの方法およびその意義についてまとめた。この成果はHerbet准教授が編著の著書Intraoperative mapping of cognitive networks: Which tasks for which location (Springer, Switzerland, 2021/08)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは共同研究機関であるモンペリエ大学と共に画像統計解析、安静時機能的MRI、覚醒下手術におけるモニタリングという3つの独立した手法を用いて、以下4つのステップで構成される。1) 社会的認知機能に関わる脳機能局在の解析と検証、2) 社会的認知機能に関わる脳内各部位の機能的結合の解析、3) アジア版の術中低次のメンタライジング検査の確立。4) 覚醒下手術による結果の検証。本研究により異なる人種間の“他者を理解する”脳内ネットワークの共通点と差異を明らかにする。最終的には世界標準の社会的認知機能温存型覚醒下手術を確立することを目標とする。初年度は、日本人を対象とした我々の研究とフランス人を対象とした共同研究機関の研究から、前頭前野は人種や感情の種類によらず、他者の顔の表情に基づく感情理解に関わる領域であることが明らかになった。二年目は、感情理解に関わる新規ネットワークを同定した。本ネットワークはヒトの種々の感情のバランスを保つ上で重要な役割を果たしている可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は継続して、感情理解に関わる皮質下の構造的および機能的ネットワークを明らかにし、これを日・仏間で比較する。研究計画の当初はモンペリエ大学に出向いて技術習得およびデータ解析を行う予定であった。しかし、COVID19への対策から、我々が渡仏することは現実的に困難な状況が続くと予想される。そこで、Web会議による研究ミーティングを実施する。なお、我々は予定している社会的認知機能に関わる機能的・構造的結合の解析に必要なデータは収集しており、基本的な技術は習得している。本研究でこれらのデータ・技術をどのように効果的に用いるかをモンペリエ大学の共同研究者と検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の蔓延により渡仏が不可能になったため。
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Research Products
(15 results)