2022 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ骨格に記録される産業革命以降の海洋貧酸素水塊の拡大
Project/Area Number |
20KK0236
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 剛 北海道大学, 理学研究院, 講師 (80396283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 貴昭 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所, 研究部門, 特別研究員 (00852310)
田中 健太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (20792766)
山崎 敦子 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (40723820)
駒越 太郎 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所, 研究部門, 研究員 (90868407)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | 海洋貧酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為起源の地球温暖化と沿岸域の富栄養化に伴う将来の海洋貧酸素化の拡大の可能性が指摘されているが、産業革命以降の気候・海洋環境変化に伴う貧酸素水塊の形成と拡大の直接的な証拠や、将来予測に不可欠な長期データが現存しない。本研究では、世界最大の貧酸素水塊の縁辺部に位置するハワイ諸島と、既に貧酸素環境にあるアラビア海という条件の異なる海域を対象とし、浅海および深海サンゴ骨格試料に対し、新たに開発する化学指標を用いることにより、海洋の貧酸素化の拡大の変遷を復元する。本研究で復元される溶存酸素濃度の長期一次データと気候 ・海洋・生態系統合モデルを組み合わせることにより将来予測を 試みる。 本年度も、昨年と同様に予定していたハワイとオマーンのフィールドワークが世界的な新型感染症の拡大により計画通り実施することができなかった。一方で、共同研究者の来日や既存の浅海サンゴのボーリングコア試料の整理と使用許可の調整や、観測モニタリング、既存のサンゴのボーリングコア試料の酸素・炭素安定同位体比ならびにMn/Ca比、Sr/Ca比の測定といった地球化学的解析を進めるなど、研究分担者がそれぞれの現地で実践できる活動を順調に進めることができた。 次年度も世界的な情勢によりフィールドワークの計画は慎重を要するが、現地の共同研究者との連携を強化し、予定していた試料の入手に取り組みつつ、既存の浅海サンゴのボーリングコア試料の再解析など現地で新たな試料を得られない場合も含めた対応の両面で検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)観測モニタリングとのキャリブレーション:海洋観測ブイのメンテナンスとサンゴの移植を実施しその後の観測継続している。ハワイ大学へ訪問し現地の共同研究者との打ち合わせを行い、観測ブイに移植していたサンゴの回収と受け取りを行った。また、現生サンゴ群体を解析し、酸素同位体比、炭素同位体比、ストロンチウム・カルシウム比の分析を行った。 2)ハワイ諸島浅海域の貧酸素水塊の時系列変化の復元:オアフ島で採取された浅海サンゴのボーリングコアの酸素・炭素安定同位体比ならびにMn/Ca比、Sr/Ca比の測定より、高精度のSr/Ca水温計(<1℃)を作成し約70年分の水温変動が明らかした。オアフ島東岸のサンゴコアは1950年代以降炭素同位体比が継続的に低下しており海洋のスース効果と考えられる。また、サンゴ骨格の炭素同位体比を比較した結果、水深の変化よりも緯度の変化に伴う骨格の炭素同位体比の変化が大きく、特に北西太平洋高緯度域のサンゴ骨格の炭素同位体比は他の海域に比べ著しく低い。この結果から、サンゴ骨格は100年規模の炭素同位体比変動は各海域固有の二酸化炭素海洋吸収量の変動を記録しており貧酸素水塊指標の開発の見通しが高まった。 3)アラビア海における貧酸素水塊の時系列変化の復元:現地のドイツ工科大学(GUtech)の共同研究者との打ち合わせを行い、サンゴ骨格の採取許可の申請を実施した。採取地点における溶存酸素ロガーの設置と候補となる浅海サンゴ群体の目星をつけている。 4)アラビア海における現生ホタテ貝の成長線解析を行い湧昇による異なる水塊の変動が記録されていることが明らかになった。今後、化石ホタテ貝にも応用し、また、地球化学的な手法も適用する予定である。 5)統合モデルによるメカニズムの解明と将来予測:ハワイとオマーンのサンゴのコアの解析が進行している。各地点の既存のコアデータの総合解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
1)観測モニタリングとキャリブレーションによる貧酸素水塊指標の高精度化:国際観測ステーションおよびハワイ大学の海洋観測ブイに移植したサンゴ試料の解析データと観測データを用いてサンゴ骨格の地球化学的解析で得る溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素、水温指標のキャリブレーションを行う。 2)ハワイ諸島浅海域の貧酸素水塊の時系列変化の復元:サンゴコア試料の地球化学的解析を継続する。キャリブレーションにより溶存二酸化炭素濃度を個別に定量的に復元し、過去数百年間における海洋貧酸素水塊の挙動と環境要因との相互関係を明らかにする。 3)ハワイ諸島の貧酸素水塊の深度分布と時系列変化の復元:水深毎の深海サンゴを採取し、海洋表層の溶存酸素濃度、水温変動、脱窒量の変遷、溶存二酸化炭素濃度の深度分布を産業革命前と現在とで比較する。貧酸素水塊の拡大の影響がどの水深で進行してきたか明らかにする。 4)アラビア海における貧酸素水塊の時系列変化の復元:サンゴ骨格のMn/Ca比から海洋表層の溶存酸素濃度、Sr/Ca比から水温変動、窒素同位体比から栄養塩濃度、炭素同位体比から溶存二酸化炭素濃度を過去250年間に渡って復元し、ハワイ諸島で復元された環境に対してアラビア海では溶存酸素濃度がどのように変化してきたかを比較する。 5)気候・海洋・生態系統合モデルによるメカニズムの解明と将来予測:ハワイとオマーン2つの貧酸素の条件が異なる海域においての貧酸素水塊の関する地球化学的データをインプットし総合解析を行い、過去から現在までの貧酸素水塊の動態解析やメカニズムの解明から、将来の温暖化による海洋貧酸素化と海洋生態系へのインパクトを定量的に予測する。ハワイ大とキール大学から共同研究者を招聘し得られた研究成果の議論や今後の国際共同研究の発展のための方策を議論する予定である。得られた結果は国内外の学会で発表するほか、国際誌に適宜投稿する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の全世界的な流行によりフィールドワークの実施が遅れていたが、本年度にはハワイ大学を訪問することができた。ただ、まだ、遅延や変更が生じている。世界の情勢を確認しながら、繰越したフィールドワークや共同研究、ワークショップの実施等を進める予定である。
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Research Products
(39 results)
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[Presentation] Coral records support upwelling in the Arabian Sea is weakening during the current warming era2022
Author(s)
Watanabe, T. K., Watanabe, T., Pfeiffer, M., Hu, H.-M., Shen, C.-C., Yamazaki, A.
Organizer
ICRS 2022 - 15th International Coral Reef Symposium
Int'l Joint Research
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