2021 Fiscal Year Research-status Report
黄海底部冷水塊における残留性有機汚染物質の濃度上昇に関する現場検証と機構解明
Project/Area Number |
20KK0239
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
後藤 哲智 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特定研究員 (90825689)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | 残留性有機汚染物質 / 黄海 / モデリング研究 / 底部冷水塊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では現場観測と数値モデリングを展開している。現場観測は黄海で行い、その観測データは数値モデルに初期条件、境界条件および検証データを提供する。モデル研究はPOPsの海水中と堆積物中の濃度分布に注目し、その分布の決定要因を検討する。 今年度は、2020年5月末、7月末、10月中旬にTang博士グループの航海で得られた黄海の海水サンプルのうち、2020年5月と7月のサンプルのデータ分析作業を行った。残りの10月のサンプルは次年度に分析する予定である。これらの観測データから、ハロゲン系難燃剤 (HFRs)の黄海における水平と鉛直分布、さらにその季節変化を解明し、海水中の組成比からその起源を探る。また、認証標準試料(堆積物)を用いて前処理・機器分析法の精度管理をおこない、堆積物中POPs濃度の実測値と認証値が概ね一致することを確認した。 モデル研究において、理想地形をベースにした海水流動・低次生態系・POPsモデルを構築し、水温躍層とフロントの存在、水温と植物プランクトンの分布がPOPsの溶存態と粒子態の濃度分布に与える影響を調べ、観測された底部冷水に関わるいくつかのPOPs濃度分布の特徴を理論的に説明できた。モデル結果に植物プランクトンの春季プルームと夏季の亜表層極大値の分布が見られた。また、POPsの収支計算からその累積率を算出し、POPsのHenry係数と生物濃縮係数が累積率に与える影響を関数で表現することで、POPsが底部冷水塊に累積できる臨界条件を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症の関係で現地のサンプリングと分析作業は海外共同研究者Tang博士グループの協力に強く依存することになっている。現地に愛媛大学理工学研究科修士課程の学生が一名滞在し、採集したサンプルのPOPs分析作業に参加しているが、分析機器使用の優先順位の関係で思う通りに行かない時もある。現在、POPsモデル研究を先行させ、POPsの濃度分布に影響を与えそうな要素を洗い出した後に、観測データによる検証を行うことで対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
現地観測について、コロナ感染症の収束を期待して現地での打ち合わせを実施し、堆積物サンプルの分析作業を進めたいと考えている。また、海外共同研究者Tang博士グループのこれまでの観測データをモデルの視点から整理し、活用したいと考えている。 モデル研究において、理想地形をベースにした3次元海水流動・低次生態系・POPsモデルを実海域(東シナ海、黄海、渤海)に適用させる。また、POPs動態に重要な役割を果たす懸濁粒子(SPM)のモデリングを継続する。さらに、懸濁粒子・POPsの吸着・脱着過程を表現する数学モデルを確立させ、最終的に3次元の実海域モデルに導入する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主にコロナ感染症の影響で海外渡航ができなかったためである。次年度に海外渡航が開始できれば旅費として使用したいと考えている。また、研究成果を積極的に海外学会で発表することも考えている。
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Research Products
(5 results)