2020 Fiscal Year Research-status Report
Systematization of direct-biogas fuel cell technology for creating a new trend of material and energy circulations
Project/Area Number |
20KK0248
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白鳥 祐介 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00420597)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤崎 貴也 東北大学, 多元物質科学研究所, 学術研究員 (30846564)
立川 雄也 九州大学, 工学研究院, 助教 (70587857)
|
Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
|
Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / バイオマス廃棄物 / バイオガス / 資源循環 / メコンデルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオガスの供給で作動する燃料電池の商用レベルの安定作動には、バイオガス中に含まれる硫化水素(H2S)の除去(脱硫)が不可欠であり、バイオマスの炭化物(バイオチャー(BC))を脱硫剤として用いるための研究開発を行っている。籾殻および竹をN2流通下500oCで保持し、BCサンプルを得た。室温において、これらBCサンプルを充填したガラス管に40 ppmのH2Sを含有するN2ガスを流通させ、BC充填部下流のH2S濃度を測定することで破過曲線を得て、破過曲線から、H2Sの吸着容量を算出した。籾殻および竹由来のBCにアンモニア(NH3)を作用させて窒素ドープすることで、脱硫性能が格段に向上したが、そのメカニズムを探るため、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(STEM-EDX)による微細構造観察、比表面積測定、化学分析およびX線光電子分光分析装置(XPS)による表面分析を行った。その結果、Pyridinic-Nの生成が脱硫性能の向上に不可欠であるが、過度に窒素ドープを行うと、BC表面に吸着硫黄が蓄積し、BCのマイクロポアの開口部が塞がれると共にSulfateが生成し、H2Sの吸着容量が低下することを明らかにした。並行して、密度汎関数理論に基づく計算(DFT計算)により、表面の窒素および酸素原子の存在を考慮して、BC表面上でH2Sが安定化するサイトを理論的に探っているが、実験結果を支持する結果が得られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍でベトナムに渡航できない状態が続いており、日越双方の進捗状況の確認や成果について議論する場を設けるため、昨年1月より、カウンターパート(ベトナム国家大学ホーチミン市校(VNUHCM)・ナノテク研究所(INT))との定例(月1回)のオンライン学術ミーティングを開始している。
バイオチャー脱硫剤の開発と同様に、バイオガスの改質を促進する触媒の設計に対しても、昨年度(初年度)よりDFT計算モデルを構築し、改質試験結果と比較しながら触媒性能を高める開発を行う計画を立てていたが、研究分担者の異動に伴い計画を変更し、上記内容を2021年度より実施することとした。一方で、脱硫剤開発における上述の実績が2報の論文投稿(国際学会誌)につながった。
以上、総合的に見ておおむね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
INTとの学術協議は引き続きオンラインで行い、国際共同研究を推進する。
BC表面上でのNH3の分解反応およびCとNの置換反応に着目し、一部がNで置換されたBC表面上でH2Sが最も安定化するサイトを表面酸素の存在下で明らかにする。小型電気炉を用いて、低酸素分圧下、400~700oCの範囲で、籾殻や竹からBCのサンプルを得て、上記計算による予測を基にBCの窒素ドープ条件(NH3分圧、水蒸気分圧等)を変えてBC(N)の合成試験を繰り返し、H2Sとの相互作用が最大化されるN導入を実現するBC(N)合成条件を見出す。BC(N)をアルミナ管に充填し、所定のH2S濃度(数~数百ppm)に調整されたN2希釈のH2Sを供給して、管下流のH2S濃度をモニタリングすることで破過曲線を測定し、合成したBC(N)のH2S除去能力を評価し、得られたBC(N,S)の表面分析により、脱硫メカニズムを明らかにする。
水熱合成をベースに、フラワー形状のセリア(CeO2)(Ce(F))を得ているが、Ce(F)の酸素貯蔵放出能(OSC)を高めることを目的にZrを固溶させ、酸化物表面上に微細なNi粒子を析出させたフラワー形状の(Ce1-xZrx)1-yNiyO2-d(CeZrNi(F))を得るプロセスを開発する。並行して、バイオガス改質において律速となる素反応の活性化障壁が最小となる触媒材料組成(x、y)を見出すDFT計算モデルの構築に着手する。CeZrNi(F)を無機繊維ネットワーク内に分散させることでペーパー触媒(CeZrNi(F)-PSC)とし、600~800oCの温度範囲でバイオガスの改質試験を行い、水素製造触媒としての性能を評価する。CeZrNi(F)-PSCをSOFCスタック内部に押し込めた改質一体型SOFCのコンセプトに対してデバイス設計の基礎となる改質および電気化学反応連成の熱流体モデルを構築する。
|
Causes of Carryover |
本課題の初年度である昨年度は、実施期間が5か月程度と短いものの、バイオガス改質に対する活性化障壁が最小となる触媒組成を探索するDFT計算モデルを構築するとともに、これと対比できる改質試験に取り組む計画を立てていた。しかしながら、研究分担者(藤崎)が2020年12月に九州大学から東北大学に転出したことに伴い、研究開始直後に当初計画通りに経費を使用することが困難となることが分かったため、初年度の経費を次年度(2021年度)に繰り越し、上記実施内容を2021年度に実施することとした。
|