2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20KK0268
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
山田 貴志 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (10721318)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 睡眠 / E/Iバランス / 脳可塑性 / 視知覚学習 / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は健常者を対象とし、睡眠が学習(視知覚学習)をどのように促進するのか、調べる実験を行った。実験は以下の2段階で行った。(i)行動実験: 実際に睡眠前後で視知覚学習が促進されるのかを確かめる再現実験。(ii)MRI実験: 視知覚学習後の睡眠をMRIで調べ、その脳内メカニズムを調べる実験。(i)では、睡眠により視知覚学習が強化、定着することを5名の実験で確かめることができた。(ii)では、睡眠中の脳活動をMRスペクトロスコピーで計測するという、世界でも限られた研究室でのみ行われている実験を行った。MRスペクトロスコピーでは、脳可塑性の指標として確立してきた興奮/抑制バランスを測定した。睡眠中の初期視覚野での興奮/抑制バランスの変化はすでに調べられていたので、内側前頭葉(medical prefrontal cortex)における訓練後睡眠中の興奮/抑制バランス変化を調べた。これは複数の精神疾患に共通して、この領域に脳構造上、機能上の変化が生じていることが示されてきたためで、後の精神疾患研究応用を視野にいらたからである。結果であるが、参加した20名中、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方を呈したのは、10名であった。行動指標である、視知覚学習では、睡眠により学習が強化、定着されることを再現できた。また、内側前頭葉の興奮/抑制バランスとの関連では、レム睡眠中に興奮/抑制バランスが低下することを発見した。また、この低下が学習の定着度合いと有意に相関する傾向にあることが分かった(r=-0.73, p=0.01)。上記の結果は、申請者の研究の方向性が妥当であることを示しており、今後はこの方向性を追求する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は健常者を対象とし、睡眠が視知覚学習をどのように促進するのか、調べる実験を行った。実験は以下の2段階で行った。(i)行動実験: 実際に睡眠前後で視知覚学習が促進されるのかを確かめる再現実験。(ii)MRI実験: 視知覚学習課題訓練後の睡眠をMRIで調べる実験。(i)では、睡眠により視知覚学習が強化、定着することを5名の実験で確かめることができた。(ii)では、睡眠中の脳活動をMRスペクトロスコピーで計測するという、世界でも限られた研究室でのみ行われている実験を行った。撮像は自分で行うため、2ヶ月ほどのMRI安全トレーニングをブラウン大学にて受講した後に、20名で実験を行った。MRスペクトロスコピーでは、脳可塑性の指標としてE/I バランスを測定した。睡眠中の初期視覚野でのE/Iバランスの変化はすでに調べられていたので、内側前頭葉(medical prefrontal cortex)における訓練後睡眠中のE/Iバランス変化を調べた。これは複数の精神疾患に共通して、この領域に脳構造上、機能上の変化が生じていることが示されてきたためで、後の精神疾患研究応用を視野にいらたからである。結果であるが、参加した20名中、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方を呈したのは、10名であった。行動指標である、視知覚学習では、睡眠により学習が強化、定着されることを再現できた。また、内側前頭葉のE/Iバランスとの関連では、レム睡眠中にE/Iバランスが低下することを発見した。また、この低下が学習の定着度合いと有意に相関する傾向にあることが分かった(r=-0.73, p=0.01)。上記の結果は、申請者の研究の方向性が妥当であることを示している。また、他の研究者に本研究分野の魅力を伝え、本研究分野の発展に寄与するため、本研究分野の総説の論文化を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は大きく以下の2つである。(i)健常者を対象とした研究で明らかになってきた結果を追加実験も含めて追求する。これにより、健常者でモデルを確立し、精神疾患研究に対する応用可能性を増す。(ii)本研究の方向性について総説という形で論文化することにより、他の研究者にも本研究分野の妥当性、魅力について共有してもらい、当該分野の発展に寄与する。(i)睡眠中の内側前頭葉がレム睡眠中にE/Iバランスを低下させ、それが視知覚学習の定着に寄与している可能性があるという知見は、健常者のみの結果としても、大変新奇性があり、追求すべき結果と考える。現在10名である、被験者数を当初の計画通り、15名程度まで増やすとともに、条件を変えた追加実験を行い、本研究結果とその解釈の妥当性を確かめる必要がある。また、学会発表などを通じて、様々な研究者と意見交換することで本研究を深める方策を探る予定である。上記は精神疾患では変化が起きることが多いとされる内側前頭葉が睡眠中に学習に果たす役割について、その健常者のモデルを確立することにつながる。これにより、今後の精神疾患研究への応用可能性が増す。(ii)睡眠中に、特定の脳領域がE/Iバランス、脳可塑性を変化させることで学習に貢献することが分かってきたのはこの数年の話である。また、E/Iバランスは自閉スペクトラム症や統合失調症において、変化していることが示唆されているため、両者は密接に関連していると思われるが、その関係性を調べた研究はまだない。したがって、総説を執筆することより、他の研究者に本研究分野の魅力を伝え、本研究分野の発展に寄与する計画である。
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