2022 Fiscal Year Research-status Report
過去の養育状況が子の認知・社会性発達に及ぼす影響とそのエピゲノム因子の同定
Project/Area Number |
20KK0280
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (90434894)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 発達 / エピゲノム / 脳画像 / 養育環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、米国エモリー大学との共同研究で得たエピゲノム解析の知見と手法を基課題に適用することで、養育環境の違いによって規定される発達状況の分子基盤を同定することを目的とする。近年、メチル化アレイデータから年齢や寿命、喫煙状況を推定してしまうデータサイエンスが盛んに行われている。本課題では、基課題および研究代表者らのグループで既にサンプリングされ、エピゲノムワイド解析を終えている約130名分のメチル化アレイデータを対象に、過去の養育環境や子の発達状況に関与するエピゲノム因子を同定し、エピゲノム情報に基づいた発達推定モデリングを構築することを目的とする。 当該年度は、前年度に前倒しで実施したエピゲノムワイドデータの前処理と発達変数との関連解析の方法が最適でないことが判明した。具体的には、前処理においてはバッチ効果の調整、関連解析では関連CpG候補の絞り込みのプロセスにおいて検討の余地があることが判明したため、この二点について再検討を行った。 その結果、基課題130名分のメチル化アレイデータについて、過去の養育環境(虐待の有無)と子の発達状況(認知機能)に関与するエピゲノム部位を同定し、テストデータに対して虐待の有無については97%の精度で、認知機能については実際の認知機能スコアと0.84で相関するスコアで推定が可能なモデルを構築した。次に、妥当性検証のために本課題サンプルとは異なる外部データに対してスコア推定したところ、ほとんど有効な推定性能が示されないことが確認された。この点については、人種や組織特異性に対する汎化性能が失われたモデルとなっていることが示唆されるため、今後は、人種やサンプル組織の異なるメチル化アレイデータの追加し、再度、機械学習することで十分な汎化性能を有する発達推定モデリングの開発に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに前倒しで実施したエピゲノムワイドデータの前処理と発達変数との関連解析の方法が最適でないことが判明したため、この二点について再検討を行った。その後、基課題130名分のメチル化アレイデータについて、過去の養育環境(虐待の有無)と子の発達状況(認知機能)に関与するエピゲノム部位を同定し、テストデータに対して虐待の有無については97%の精度で、認知機能については実際の認知機能スコアと0.84で相関するスコアで推定が可能なプロトタイプとなるモデルを構築した。しかしながら、他コホートによる外部データに対しては有効な推定性能が示されなかったため、今後は他コホートを用いた妥当性の検証が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
基課題の約130名分のエピゲノムワイドデータに基づいた発達推定モデリングについてはプロトタイプを完成させたため、次年度以降は、年度前半を目途に、共同研究先(エモリー大学:約100名、ブラウン大学:約150名)が保有するコホートを用いて、機械学習を用いた発達推定モデリングの妥当性検証を行う。また研究進捗の遅れにより、脳画像データとの相互検証が遅れているため、エピゲノムデータと脳画像データとの関連性についても検討する。年度後半は、エピゲノムワイドデータと脳画像に基づいた発達推定モデリングの解析結果について、米国渡航先の共同研究者の助言を踏まえながら、論文として成果を取りまとめる。
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Research Products
(1 results)