2023 Fiscal Year Annual Research Report
世帯内に隠れた貧困:国際共同研究を通じた実証的把握と貧困把握の新たな方法論の構築
Project/Area Number |
20KK0287
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 里美 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20584098)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 貧困 / ジェンダー / 世帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、世帯を単位とした従来の貧困把握の方法では見えなくなってしまう世帯内に隠れた貧困について、「消費生活に関するパネル調査」(JPSC)のデータを分析することで、日本におけるその実態を実証的に把握することであった。その際、同様のデータの分析に長く従事してきた海外の研究者と共同で行うことで、世界的にも類を見ないデータソースであるJPSCの分析可能性を最大限に高めるとともに、国際的レベルの研究に発展させようとしていた。 本研究の第二の目的は、従来の貧困研究の方法とその背後にある貧困概念を、ジェンダーの視点から問い直す理論的検討を行うことであった。特に女性が世帯内で経験している不平等とそれゆえに生じる困窮状態を把握するためには、世帯単位で貨幣資源を把握するという従来の貧困研究の手法を超えて、個人単位かつ貨幣にとどまらない生活の把握と、その背後にある貧困概念の再検討に踏み込む必要がある。 本年度は、2022年に10ヶ月間英国・グラスゴーに滞在して行った世帯内資源配分に関する共同研究の成果として、日本の同研究分野の状況を英語圏の研究状況のなかに位置づけ、英語論文として出版した。また滞在中に整理をした英語圏・日本語の研究のレビューを、生活経営学とフェミニスト経済学の成果と関連づけて論文を執筆するとともに、学会シンポジウムで報告した。このような世帯内資源配分研究の成果とその実態を把握することは、世帯を単位にしてきた従来の貧困研究の方法論を刷新する可能性を持ち、貧困概念やその捉え方をジェンダー視点から豊富化させる理論的観点からその重要性を位置づけることができる。
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