2023 Fiscal Year Annual Research Report
Generating mechanism of the fragmented crystallites in natural minerals
Project/Area Number |
20KK0307
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
永嶌 真理子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80580274)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | ラマン分光 / 結晶性 / 非晶質 / クリノゾイサイト / 緑簾石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は研究代表者がメタミクト化に類似した現象を放射性元素を含まない天然の緑簾石族鉱物から見出したことから始まった (Nagashima et al., 2011).発生範囲が限定的で光学顕微鏡では通常の結晶と区別できず,ほぼストイキオメトリーな化学組成を持ち,さらにX線回折を用いた長周期原子配列や高分解能透過電子顕微鏡を用いたナノオーダーでも本現象の捕捉は困難であることから,本現象は普遍的であるにもかかわらずこれまで見過ごされてきたと考えられる.研究代表者は本現象の実態解明のため短周期原子配列の検討を計画し,Mihailova教授(ハンブルク大学)の協力の下,偏光顕微ラマンスペクトル法を適用するに至った(本研究課題). 偏光顕微ラマンスペクトル解析の結果,本研究で対象とした緑簾石は「原子配列の周期性に乱れがない同方位を持つ結晶子が断片化し,それらの境界領域の結晶性が低下している状態」であると考えられ,これまでの観察事実はこの解釈を支持する.しかし,このような現象は報告例がなく,地球科学分野に新たな知見をもたらすものとなった. さらに多様な環境で生成した異なる化学組成を持つ緑簾石族鉱物31試料から得たラマンスペクトルに基づき,上述の結晶性の低下が結晶構造内の遷移金属元素の原子結合状態に起因することを明らかにした (Nagashima et al., 2021, 2023).またラマンピークの帰属を結晶化学的観点から検討し,緑簾石中のFe3+含有量とラマンピークの系統的な関係を明示し,ピーク位置からFe3+含有量を高精度で決定する関数を提案した(Nagashima et al., 2023).緑簾石は地熱環境~超高圧まで広い地質環境で産する種であり,その生成条件の理解にFe3+含有量の決定は重要であることから,今後地球科学の広い分野での活用が期待される.
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