2021 Fiscal Year Research-status Report
Microscopic urban traffic state estimation and optimization by data driven approach
Project/Area Number |
20KK0334
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
塩見 康博 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40422993)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 都市交通 / データ駆動 / 高速道路 / シミュレーション / デジタルトランスフォーメーション / MaaS |
Outline of Annual Research Achievements |
多様な交通手段が利用可能で複雑化する都市交通システムの円滑性・安全性を高次元で実現することは,都市の活力を高め,生産性の高い社会を実現するために必要不可欠である.本研究では,インフラや移動体からリアルタイムに収集される種々のデータを統合するシミュレーションプラットフォームを構築するものである.またその要素技術として,移動体の挙動を再現するデータ駆動型モデルの開発とそれに基づくデータ同化アルゴリズムの開発,深層強化学習を用いた交通システムの最適化手法の構築,仮想空間・現実空間間でのフィードバックシステムの開発に取り組んでいる. 交通シミュレーションの構築に関しては,高速道路を対象に先行して進めている.近年,自動運転技術の検証などの目的で多様な車両挙動データがオープンデータ化されている.本研究ではそのうちの一つである阪神高速道路(株)の公開するZTD(Zen Traffic Data)を活用し,フォーカルロス関数を援用した車両挙動モデルを開発した.これにより,運転挙動の確率分布を考慮しつつ,高い再現性を得ることを確認した. また,一般道の交通行動を分析するため,自動運転タクシーなどが普及した状況を想定した交通行動変容に関するRP調査を実施した.これにより,ドアツードアの移動を提供する自動運転の交通手段に対する利用意向は6割以上と高いものの,それを実際に無料で提供した場合に行動を変容した被験者は2割程度に過ぎないことを明らかとした. 公共交通に関する分析としては,草津市内を対象にバスの運行する路線の三次元点群データを収集したほか,路線バス3台にバスロケとドライブレコーダーを搭載し,それらのデータをリアルタイムに可視化するシステムを構築した.また,バスロケデータから所要時間を予測する手法を開発し,その精度検証を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,2021年11月からオランダのデルフト工科大学に滞在し,共同研究を実施している.渡航当初はCovid19によるロックダウンが実施されており,オンラインでの活動を余儀なくされたが,2022年2月以降は全ての規制が撤廃され,当初想定していた共同研究の取り組みを進められている.とりわけ,HighDなど一般道や交差点における車両軌跡データの利用可能性が広がり,データ駆動型の車両挙動モデリングに関しては,当初の想定以上に進んでいるといえる. また,オランダ滞在中にありながら,研究協力者の協力を得て国内をフィールドとした取り組みも同時並行的に進めている.とりわけ,2021年度には新しい交通手段が利用可能となった状況を想定した交通行動変容実験を予定通り実施でき,その結果を取りまとめることができた.また,シミュレーションのプラットフォームとなる道路空間の3D点群データの取得,路線バスへのGPS端末の設置が完了している.バスロケの設置に関しては,半導体の供給不足により設置に遅れが生じているが,研究の進捗にあたっては大きな問題はなく,2022年度の研究取り組みのための準備が順調に進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は移動体挙動のモデリング,シミュレーションプラットフォームの構築と活用,サイバー空間での活用を考慮した交通行動の変容解明に取り組む. まず,移動体挙動のモデリングについては,現在,デルフト工科大学と共同で進めている走行軌跡データを活用したデータ駆動型モデリングの高度化を行う.具体的には,高速道路を対象として,車線変更や合流・分流といった多様な挙動のモデル化を進める.また,このアプローチをHighDなど多様なデータセットへ横展開する可能性についても検討する.加えて,車両だけではなく,歩行者の歩行行動についても周辺環境との相互関係を考慮したモデルの構築に取り組む. シミュレーションプロットフォームについては,昨年度にシミュレーター内のエージェントの挙動を外生的に与えるモジュールと,ホットスタートを行うモジュールの実装が完了した.これを踏まえて,まずは高速道路を対象とした車両挙動,交通管制の強化学習に基づく最適化を行う.また,一般道に関しては,路線バスのロケーションデータや,そのドラレコに基づく画像データからの交通状態推定の可能性についても検討を行う. 最後に,交通行動に関しては,今後のサイバー空間での活動の拡充を念頭においた上で,近未来の交通需要やトリップ特性について検討を行う.具体的には,多様な居住環境や多様な世帯を対象とし,物理的な移動と情報通信,Eコマースによるモノの移動の代替性や補完性についてのアンケート調査を実施する.これに基づいて,交通サービスのレベルを念頭においた,今後の人の移動のシナリオを策定する.
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