2023 Fiscal Year Research-status Report
電磁法探査による地下水情報を活用した農業被害の空間的ダウンスケール手法の開発
Project/Area Number |
20KK0346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 貢士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20420226)
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Project Period (FY) |
2021 – 2024
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Keywords | 作物生長モデル / 地下水位推定 / 農業被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は地下水位情報および微地形を作物生長モデルに組み込むことによってコメ収穫量や農業被害額の推定精度がどの程度向上するかを明らかにすることである。本年度はコロナで進捗が遅れていた電磁地盤探査手法を用いてタイ国コンケンでの地下水調査を行った。タイ国カセサート大学のDr. Desellおよびコンケン大学Dr. Mallikaの協力のもと、コンケン県の天水稲作地域に2か所の測定領域を設定し、それぞれに5本の地盤探査測線を設定し、得られた比抵抗値をもとに2次元空間分布を作成した。また、作物生育モデルについては、天水田における作付け時期の精緻化を行った。具体的には農家の労働力を指標化した1日当たりの作付け可能面積をパラメータとして、気象条件から得られた土壌水分量から作付けエリア拡大の様子を再現した。結果として、2000年以前と2000年以降では作付けが約1か月ほど遅れてきており、その分散も大きくなる結果が得られ、農家にとって栽培が困難な状況へとシフトしていることが明らかとなった。加えて、全球気候モデルGCMの2100年までの将来気候予測値をモデルに入力し、作付けエリアと作付け進行速度の変化を予測した。一方で、3月にコンケンで開催を予定していた現地ワークショップについては、現地カウンターパートの都合により延期して翌年度に開催することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では電磁地盤調査手法による地下水位の空間分布推計はR4年度までに終了する予定であったが、コロナの影響で気象観測器の設置が遅れ、R5年度に1年遅れでようやく測定を終了することができた。また、研究成果を現地還元し、より実際の栽培体系に即したモデル化を行うための意見交換を行う場として設定していた現地ワークショップについては、カウンターパートの都合により、次年度に延期することとなったため、全体的な研究の進度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現地観測については電磁地盤探査に得られた地下水情報をもとに地下水位変動と地形の関係性をモデル化する。また、それを作物生長モデルに結合し、水田の立地条件が地下水位や下方浸透量の大きさに及ぼす影響を評価する。農業被害額推計については1981年から2018年までの気象データを作物生育モデルに入力し、各県における推定結果から地域ごとのリスク発生頻度を検討すると共に、現地農家のアンケート結果をもとに世帯収入に対する影響度を評価する。
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