2021 Fiscal Year Research-status Report
The effect of climate on the evolutionary process of lepturine beetle-yeast symbioses
Project/Area Number |
20KK0349
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土岐 和多瑠 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50611406)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 消化共生 / 木材 / 材食性昆虫 / 酵母 / 垂直伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
材食性昆虫の多くは微生物と共生し、微生物の助けを借りて消化困難な木材を餌とすると考えられる。ハナカミキリは幼虫が材食性で、キシロース資化性酵母と共生する。基課題では、中部地方産ハナカミキリを網羅的に調べ、温帯に成立するハナカミキリ-菌共生系を明らかにした。本国際共同研究では、これを拡張し、異なる気候条件の森林においてもこの共生パターンが普遍的に見られるかを検証し、共生系の成立プロセスと気候条件の関係を明らかにする。 今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外渡航が不可能であったため、中部地方におけるハナカミキリ-菌共生系の多様性の解明度の充実を図るとともに、北海道のハナカミキリ群集を対象に加えることとした。また、森林においては、ハナカミキリ以外の多くの昆虫も材を利用することから、ハナカミキリを含む材利用性昆虫と菌の共生系間で共生菌の転換などの相互作用が予想される。そこで、その他の材利用性昆虫についても共生微生物と機能を調べ、ハナカミキリ-菌共生系との共通性について調査した。 北海道では、中部地方と比べて、ハナカミキリの種によって共生菌の種が共通する場合と異なる場合、それら両方を保有する場合が認められ、共生菌の転換や重複といった共生関係のダイナミックな変化が示唆された。 材内で共生菌を栽培して食べるツツシンクイムシ科昆虫より菌を分離したところ、ハナカミキリから分離例のある酵母が得られた。 ニホンホホビロコメツキモドキ-酵母共生系について、酵母の材関連糖に対する資化性と竹組織中の栄養源を調べたところ、酵母はキシロース資化性を有するが、キシロースではなく、髄に含まれる遊離糖(グルコース、フルクトース)を栄養源に増殖し、幼虫の餌となることが分かった。つまり、材利用性昆虫の共生関係において、共生菌は、必ずしも難分解性成分の分解を通して昆虫に寄与するわけではないことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の目的である、台湾での野外調査が全くできておらず、亜熱帯のハナカミキリー菌共生系の多様性の糸口すらつかめていないことが主な理由である。ただし、温帯のデータをより充実させ、亜寒帯のデータを新たに取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、当該国における研究者向けのビザの発給手続きが停止されており、渡航可能な時期を予想することが困難である。新型コロナウイルスの状況を注視し、手続きが再開され次第、すみやかに渡航したい。それまでは、国内、特に北海道でのデータの充実を図りたい。
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Research Products
(2 results)