2022 Fiscal Year Research-status Report
プロテアーゼ活性制御による脳神経再生の高効率化と虚血性脳疾患治療への展開
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20KK0381
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
河下 映里 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80509266)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Keywords | 新生児低酸素性虚血性脳症 / 脳梗塞 / α2アンチプラスミン / ニューロセルピン / 線溶 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、脳神経再生療法の確立に向けて、神経幹細胞などの移植実験が試みられているが、neural replacement効果が低いのが現状である。この効果の向上を目指した基課題の研究では、脳梗塞モデルでの、α2アンチプラスミン(α2AP)の機能抑制による内因性神経新生の促進が期待できる。この研究をさらに発展させるため、本国際共同研究では、神経細胞を用いた再生療法の基盤が未確立の新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)について、α2AP機能の抑制による神経再生促進効果の応用可能性を検証する。また、神経毒性を抑制する因子としてニューロセルピン(NSP)に着目し、α2AP機能の抑制とNSP投与のコンビネーションによる、脳梗塞および新生児HIEに対する神経再生療法の高効率化を実証する。具体的には、光化学誘発性脳梗塞マウスモデルおよび総頸動脈結紮・低酸素負荷による新生児HIEマウスモデルの病態形成におけるα2APおよびNSPの役割、各病態に対する抗α2AP中和抗体およびNSP投与の影響を明確にする。当該年度では、α2AP欠損マウスにおいて、脳室下帯での新生神経細胞数が野生型マウスに比し顕著に多く、さらに傷害部方向に移動する新生神経細胞数も野生型マウスより多いことを明らかにした。一方、留学先のZoltan Molnar教授グループとの共同研究において、軽度な病変を示す新生児HIEモデルにおける大脳皮質層の厚さおよび成熟神経細胞数の減少が、NSPの脳室内単回投与により抑制される可能性が示唆された。現在、重篤な脳損傷を呈する新生児HIEマウスに対するNSP投与による神経保護効果の検証およびそのメカニズムの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、脳梗塞修復過程での神経新生におけるα2APの役割が明らかとなり、軽度の新生児HIEにおける大脳皮質層の厚さおよび成熟神経細胞数の減少が、NSPの脳室内単回投与により抑制されることが示唆された。現在、重篤な脳損傷を呈する新生児HIEマウスにおけるNSP投与による神経保護効果の検証およびそのメカニズムの解析を進めているが、脳梗塞および新生児HIEに対するα2AP機能の抑制とNSP投与のコンビネーション治療効果を検証するという本共同研究目的を達成するための、基盤となる研究成果が得られており、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、新生児HIEの病態形成におけるα2APの関与を明確にするため、α2AP欠損あるいは抗α2AP中和抗体の新生児HIEマウスモデル病態に対する影響を解析する。また、α2AP機能の抑制とNSP投与のコンビネーションによる、脳梗塞および新生児HIEに対する神経再生療法の高効率化を実証するため、脳梗塞および新生児HIEマウスモデル病態に対する抗α2AP中和抗体およびNSPの併用効果を検証する。
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