2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21000004
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤澤 利正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20212186)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 修一 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (30282685)
村木 康二 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, その他部局等, 主幹研究員 (90393769)
熊田 倫雄 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, その他部局等, 研究主任 (30393771)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 半導体量子構造 / 量子ホール効果 / エッジチャネル / エッジマグネトプラズモン / 量子スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、半導体量子ドット・量子ホール効果・スピントロニクスの研究と量子光学の知識を融合し、「半導体量子構造による電子波束のダイナミクス」の研究を推進するものである。単一電子波束の干渉性やスピン依存現象を探求し、多体電子状態の物性測定に応用するとともに、電子波束を用いた新たな応用技術への可能性を追求する。GaAsやグラフェンでの実験研究や、トポロジカル絶縁体での理論研究を中心に研究を進め、下記の成果を得た。 エッジマグネトプラズモン(EMP)伝導に関して、[1]人工的な朝永ラッティンジャー流体系とみなすことができる結合量子ホールエッジチャネル系における電荷密度波束の時間分解測定により、特徴的な電荷分断化現象を観測することに成功した。[2]プラズモン伝搬を容易に解析するためのカイラル分布定数モデルを提唱し、量子ポイント接合・プラズモン共振回路など実験結果との比較からモデルの正当性を示した。[3]量子ドットを用いた時間分解エネルギー分光測定により電子温度上昇の様子を検出した。[4]グラフェン端のプラズモン伝搬速度の解析から、測定系における歪を補正し、より正確な伝搬速度を評価した。条件によって2桁以上に渡り速度を変調できる。[5] グラフェンにおいて電子密度の空間的変調により、プラズモンのガイディングやルーティングを実証した。[6]3端子三重量子ドットの少数電子領域における伝導測定を行い、この系に特有の協力的なトンネル現象を見出した。三重ドットの共鳴条件でのスピン緩和抑制や電流抑制を明らかにした。[7]分数量子ホール系の準粒子干渉実験用の試料を作製し、基本特性を確認した。[8]スピン波(マグノン)のトポロジカル状態を示すマグノニック結晶に関して理論的な予言を行った。二種類の強磁性体を2次元的に配列した構造におけるトポロジカル相を理論的に明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個々の研究テーマによって進展に差があるが、研究遂行上に見い出した現象などを含めて、順調に研究が進展しており、およそ予定通りの成果が見込まれると考えている。4つの目標に対する進捗は以下のとおりである。 「電子波束の測定技術の確立」に対しては、遅延制御やビームスプリッターに関する技術を確立し、GaAs系やグラフェンでの基礎物性を評価し、周波数変換・共振器への応用などの成果を得ている。相関測定・量子雑音測定に関する研究が立ち上がりつつあり、1次相関・2次相関測定を計画中である。 「高精度・短時間波束制御技術の確立」に向けて、素子の非線形性に起因する高調波発生や周波数混合などの成果を上げた。 「量子ホール状態の物性測定」では、GaAs系やグラフェン系でのプラズモン速度などで多くの成果に至っている。特に、対向するチャネルを結合することにより、朝永ラッティンジャー流体に特有の電荷分断化現象を検証したことは物理的な意義が大きい成果である。複数チャネル間の相互作用パラメータを扱うことができるカイラル分布定数モデルを構築できたことによって様々な素子への発展が可能になった。占有率5/2状態を明瞭に観測できる分数量子ホール試料など、世界のトップレベルの高移動度電子系を作製することにも成功している。 「電子スピン波束の生成と制御」では、量子ホール系と類似のトポロジカルなモードを探索する計画が具体化し、マグノニック結晶によりトポロジカルなカイラルエッジ状態が実現するという理論的成果を得た。さらに、二重量子ドット中や三重量子ドット中での電子スピン制御や核スピン制御に関する研究にも成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
量子ホールエッジチャネルのダイナミクスに関して、一次元の電子伝導という考えよりも、一次元のプラズモン伝導によって理解できるという考えが定着しつつある。本研究で明らかにしつつある朝永ラッティンジャー流体の挙動はその一例であり、スピン電荷分離など、多彩なプラズモン伝導現象を明らかにしてゆく。特に、時間分解電荷測定、量子ドットによるエネルギー分光測定、相互相関雑音測定などの特徴的な測定手法を用いることにより多角的にプラズモン伝導を明らかにできると考えている。また、テラヘルツ波近傍の超高周波帯におけるプラズモン回路など、未踏の計測技術を確立し、基礎的な物性研究に活かすとともに、応用技術への指針を得る方向の研究も進めてゆく。さらに、グラフェンのディラック電子系やマグノンでのスピン輸送における伝導への可能性も含めて、研究をすすめてゆく。
|
Research Products
(37 results)