2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21000006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸岡 啓二 京都大学, 理学研究科, 教授 (20135304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 真 京都大学, 理学研究科, 助教 (10546980)
橋本 卓也 京都大学, 理学研究科, 助教 (20437198)
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Project Period (FY) |
2009-05-08 – 2014-03-31
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Keywords | 高性能有機触媒 / キラル相間移動触媒 / 二官能性触媒 / 環境調和型 / 酸塩基複合触媒 / アミナール / 1,3-双極子付加環化反応 / 有機ラジカル |
Research Abstract |
本研究では有機触媒の性能に応じて、高性能有機塩基触媒、高性能有機酸触媒、高性能有機酸塩基複合触媒、高性能有機ラジカル触媒という四つの研究項目に分けて、高性能有機触媒の合理的なデザインを目指すとともに、これら高性能有機触媒を駆使して精密有機合成反応を開拓した。まず、単純なケトン基質の不斉アルキル化に必要な新規キラル相間移動触媒を探索し、簡素化丸岡触媒の改良型が良い結果を与えることを見出した。また、二官能性キラル相間移動触媒を更に改良し、環境調和型の不斉変換反応の開発を試み、中性条件下における不斉合成反応を幾つか開発することに成功した。一方、ビアリール骨格を有する有機酸塩基複合触媒の反応としては、嵩高いアミン触媒を用いることで、高立体選択的にアルデヒドを系中発生させたニトロソカルボニル化合物に付加させて、ヒドロキシアミノ化体をα-アミノアルデヒド等価体として得ることに成功した。また、リン酸などの有機酸存在下でBoc保護されたアミナールがイミン前駆体として機能することを見出し、これまで合成例の無かったマンニッヒ生成物を得ることに初めて成功した。光学活性ビナフチルジカルボン酸触媒を利用した研究においては、キノンイミンケタールの触媒的不斉合成への利用と非環状アゾメチンイミンとアルキンとの不斉1,3-双極子付加環化反応の開発に成功した。またボロン酸エステル形成を鍵とする新規光学活性カルボン酸触媒を利用した高立体選択的アジリジン化反応を確立した。有機ラジカル反応剤として、超原子価ヨウ素ラジカルを発生させ、不活性な飽和炭化水素類の選択的酸化反応を試みた。特に、嵩高い超原子価ヨウ素反応剤をデザインして高選択的なラジカル酸化を可能にした。一方、有機ラジカル触媒として光学活性チイルラジカル触媒を開発し、不斉ラジカル環化反応を高立体選択的に進行させる試みを始め、良い結果が出始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本特別推進研究も5年目を迎え、「有機塩基触媒」、「有機酸触媒」、「有機酸塩基触媒」の創製研究では、従来以上に順調に進み、数多くの成果が出た。査読付き論文が25報となり、本特別推進研究の期間中、最も多く論文を発表することができた。また、招待講演も17回(そのうち、海外での公演が、11回)にのぼった。一方、これまでなかなか成果の出なかった「有機ラジカル触媒」の化学で初めて国際誌(Angew. Chem. Int. Ed.)に論文を発表することができた。また、ごく最近, 有機チイルラジカル触媒を用いる不斉環化反応の開発に成功し、Nature Chemistry誌に採択が決まり、当初の予想を上回る成果が出た。
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Strategy for Future Research Activity |
「有機ラジカル触媒」の化学は、当初から難航が予想されていたが、ここに来てやっと新たな兆しが見えてきた。このため、最終年度には、前年度の成果を発展させ、論文を幾つか発表したい。有機チイルラジカル触媒では、最近完成した光学活性触媒の適用限界を拡張するとともに、「チイルラジカルでなにがどこまでできるか」の目途をつけるため新しいチイルラジカル触媒反応の探索に力を入れる。一方、「有機塩基触媒」、「有機酸触媒」、「有機酸塩基触媒」の創製研究は、順調に進んでおり、最終年度でも多くの成果が期待できる。「有機酸塩基複合触媒」の化学においては、触媒の酸性官能基の役割について新たな知見が得られており、立体選択性の制御だけでなく、これまで十分な研究がなされていない、多反応点を有する基質における位置選択性の制御を目指した研究の推進を予定している。有機酸触媒の研究の中でボロン酸そのものによって触媒される特有の反応が存在することが明らかになった。この発見を探求することにより「光学活性ボロン酸触媒」という新たな有機酸触媒コンセプトの創出を図る。
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