2012 Fiscal Year Annual Research Report
MEMSと実時間TEM顕微観察によるナノメカニカル特性評価と応用展開
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21000008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 博之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90134642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 成朗 成蹊大学, 理工学部, 教授 (40360862)
橋口 原 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70314903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | MEMS / TEM / ナノコンタクト / ナノハンドアイシステム |
Research Abstract |
原子レベルのせん断変形を実時間で観察し、同時に力をサブnNの精度で観測できた。結晶構造由来の不連続な変形の観察に成功し、この際に加わる力の変化を計測した。ナノ接合のせん断破壊に必要な力と変位の値から、摩擦で失われた力学的エネルギーを算出した。さらにせん断破壊に伴い新たに露出した表面積を計測し、表面エネルギーの増加量も算出した。その結果、力学的エネルギー損失量と表面エネルギー増加量がほぼ一致していることが分かった。これは接触箇所を直接観察できる実験系で初めて可能となった優れて独創的な結果である。 シリコン対向探針間に形成される真実接触部のせん断過程における形状変化を分子動力学シミュレーションで調べた。せん断過程が進むにつれてナノ接合部が鉛直方向から水平方向へ傾いた後、ナノ細線となって延伸して、最後に破断した。この一連の形状(接合角度、接合径)の変化のプロセスを、接合部への原子流入の効果を考慮して評価すると、実験を極めて良く説明できる事が分かった。一方、このせん断過程を100回以上繰り返すと、せん断回数の増加に伴う、アモルファス領域の増加とせん断硬さの減少傾向が現れた。 ナノ粒子上の近接場伝播は、新しいナノ光学を拓くキーテクノロジーとして期待されている。この現象を詳細に調べる目的で、ナノ粒子の種類や直径、配列間距離など、多くのパラメータについて系統的に実験できる計測システムを、分子ピンセットを用いて実現することを試みている。分子ピンセット間に伸張固定したDNA分子上にナノ粒子を平面的にアレイ化した実績に基づき、分子ピンセットを可視光の光ファイバとして、ナノ粒子アレイと入出力の対となる光ファイバを一体化形成することができる。昨年度は光分子ピンセットの作製プロセスを考案して実際に試作し、光ファイバの実装を行った。そして、分子ピンセット先端部より、可視光を放射することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トライボロジーについて:(1)正確に摩擦力を測定できる実験系を構築し、(2)接点の直径を変えて形状依存性を計測し、(3)複数の材料のせん断破壊を比較した。後は接触時にかかる荷重計測が残された課題である。作業量から考えて完成度は90%であり、計画していた進捗より早い。 平成23年度までの研究から、シリコン対向探針間に形成される真実接触部のせん断過程の分子動力学シミュレーションとMEMS測定との比較が、当初の予想を超えてうまく行く事が示唆された。そこで平成24年度は、超高圧条件下でのシリコン接合の破断過程のシナリオを構築するため、応力集中部のアモルファス化などの追加の分子動力学計算に注力し、実験結果を説明する事に成功した。このように当初の研究計画として挙げていたシリコンナノコンタクト(ワイヤ)の解析に成功した。 本来昨年度までに、分子ピンセット間に伸張固定したナノ粒子アレイを伝播する光の検出まで確認したかったが、実際はプロセス開発とデバイス実証に留まっている。そのため達成度としては50%である。
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Strategy for Future Research Activity |
試料を2つの方向に回転できるサンプルホルダーの開発を行い、電子ビームと結晶格子の方向を一致させることで、ナノ構造の原子レベルの詳細な観察を可能にする。昨年は試作品の開発を行って、改善点を明らかにした。本年では改良したホルダーを実際にTEMにいれて結晶を観察する。Agのナノ接合のせん断試験を行い、転位の動きや微小なスティックスリップ現象のその場観察を試みる。 ナノスケール接合の熱伝導特性をより高感度で計測できる実験系を構築し、同時にナノ接合の形成と形状制御に用いるMEMSデバイスも改善する。新たに構築した実験系によって、DLCとWのナノワイヤの熱電気特性について、90Kから350Kの範囲で計測する。 「(2)現在までの達成度」で述べたように、シリコンナノコンタクトのせん断過程の解明に成功し、真実接触部のせん断破壊過程に基礎的な知見を与える事が出来た。このテーマを発展させれば、ナノスケールとマクロスケールの間の中間スケールの摩擦の素過程の理解が著しく進むことが期待される。そこで当初、平成23年度以降に予定していた「密度汎関数法等との融合手法開発」のテーマを「真実接触部のトライボロジー解析」に変更して、真実接触部の生成・破断の一連の過程を説明するモデリングを試み、シリコンの他に銀などこれまでのMEMS測定との比較に焦点を当てて研究を進める。 開発した分子ピンセットを量産し、早急に分子ピンセット間に伸張固定したナノ粒子を伝播する光の検出実験を行う。プロセス及びナノ粒子の伸張固定には実績があるので、光ファイバと分子ピンセットとの接続にさえ問題がなければ実験は可能となる。用意している光検出器の感度内で測定できれば、ナノ粒子の径や伸張固定長さなどの関数として、光の伝播を測定したい。感度が十分でない場合、フォトマルによる増幅による検出を試みる。
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Research Products
(61 results)