2013 Fiscal Year Annual Research Report
MEMSと実時間TEM顕微観察によるナノメカニカル特性評価と応用展開
Project/Area Number |
21000008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 博之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90134642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋口 原 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70314903)
佐々木 成朗 成蹊大学, 理工学部, 教授 (40360862)
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Project Period (FY) |
2009-05-08 – 2014-03-31
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Keywords | MEMS / TEM / 第一原理計算 / ナノコンタクト / ナノハンドアイシステム |
Research Abstract |
本研究は、MEMS (micro electro mechanical system)と透過型電子顕微鏡(TEM)を組み合わせた計測系を構築し、ナノ物体や極微量分子に力や電圧を加えた時の形状変化の実時間観察と各種物性値の高感度測定を同時に行うことを目的としている。ナノ熱伝達特性、ナノトライボロジー特性、繊維状ナノ材料特性を対象として、ナノ物体の寸法や形状と物性値との関係を動的に明らかにした。 【ナノ熱伝達特性評価】 ヒーターと熱センサーを集積した探針間にナノ接点を作製し、TEM内でナノ接点の大きさを制御しながらそこを透過する極微の熱量を検出した。計測の結果、接合の直径が数nmになると、熱伝導率がマクロスケールと比較して100倍以上高くなることが分かり、室温でのバリスティック熱伝導を初めて実験的に確認できた。 【トライポロジー】 対向探針間にナノ接合を形成して荷重を加えるために用いるMEMSデバイスを改良し、摩擦やせん断などの水平方向の力だけでなく、接触や引っぱりなどの荷重方向の力を同時に計測可能とした。銀、DLC (Diamond Like Carbon)、PTFE(テフロン)、二硫化モリブデン等の固体潤滑材を対象に、荷重や形状を変えて比較した。銀のせん断破壊を観察した結果、隣接原子間隔に相当する滑りを計測した。銀の結晶格子由来のスティックスリップ現象を初めて見出した。また同じ過程を分子動力学法にて計算したところ、真実接触部の結晶性が保たれたまま各層のスティックスリップ運動が起き、実験の測定結果と相同の結果を得た。理論計算と実験結果の両面から変形過程のモデルを構築した。 さらに、シリコン対向探針間に形成したナノ接合のせん断過程について実験と分子動力学計算の両面から解明を試みた。せん断が進むにつれてアモルファス化した接合部が水平方向へ微小に傾いた後、接合径が減少して、ナノ細線となって延伸するモードに移行し、最後に破断する計算結果が得られた。これにMEMSの初期探針形状の違いや接合部への原子流入の効果などを加味することで、実験で得たナノ接合の一連の形状変化を理論計算上で再現することに成功した。 【繊維状ナノ材料特性評価】 微小ナノ物質の計測を目的としたナノギャップ分子ピンセットを開発した。アスコルビン酸添加ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液に金を溶かしたメッキ液を作成し、電気メッキ時のプローブ間電流をモニタリングすることでナノギャップを形成した。ギャップ間でクーロンブロッケードを示す電流特性も確認できた。中空構造により可視光を伝播することのできる分子ピンセットの開発を実施し、光が分子ピンセット先端部まで伝播していることが確認でき、光ブローブと分子ピンセットを一体化することに成功した。以上の成果は当初の研究計画を十分に満足するものであり、それに加えて新たな現象の発見に成功した。
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Research Products
(19 results)