Research Abstract |
RNAの試験管内分子進化法は,生命起源の研究手段として急速に発展した.しかし,ランダムDNAプールやPCR法などの分子生物学的手法が必要な点は,原始化学進化を検証する手法として根本的な欠陥である.そこで,原始地球上に存在したと考えられる前生物的素材と反応を用いて,新しいRNA分子進化系の構築を試みた.最初の2年間で,RNAの(1)ランダム生成および(2)自然選択の手法をおおむね完成した.昨年度後半からは,(3)複製・増幅・変異を起こす非生物的なRNAの反応系の開発を試みた,本年度は以下について検討した. (i)原始的な複製反応を起こさせるためには,RNAの2重構造を安定化させる条件が必要である.そこで,インターカレータおよび原始タンパク質モデルがRNAの2重らせんを安定化させるかどうか調べた.インターカレータはかなり安定化させたが,原始タンパク質モデルではそのような効果は認められなかった. (ii)複製系の検討:原始RNAポリメラーゼモデルとしてポリシチジル酸とし活性化グアノシンモノマーを用いるとオリゴグアニル酸が生成する.この反応はその他の鋳型とモノマーの組み合わせでは反応は進まない.上記の,インターカレータおよび原始タンパク質モデルを添加して影響を調べた.インターカレータ共存下では,反応を少し促進した.しかし,複製反応を起こさせるほどの効率は得られず,さらに検討が必要であることを知った. (iii)本研究で生成するRNA鎖長は10-30程度であり,電気泳動法では分析困難である.また,数10μLの微少試料を扱わなければならない.そこで,キャピラリーLCに逆相系モノリスカラムを用いて25鎖長程度のヌクレオチドを1鎖長の違い,および1塩基の違いで識別できる用法をつくった. 以上,当初の目標には到達しなかったが,着実に問題を解決しつつあり今後さらに検討を進めていく.
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