2009 Fiscal Year Annual Research Report
脂質が媒介する細胞間情報伝達に着目した神経回路の発生再生機構の研究
Project/Area Number |
21200009
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 裕之 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経成長機構研究チーム, チームリーダー (10233933)
|
Keywords | 脊髄 / 後根神経節 / 軸索ガイダンス / リゾ脂質 / Gタンパク質 / 受容体 |
Research Abstract |
脂質が媒介する細胞間情報伝達に着目し、グリア細胞が放出するリゾ脂質が脊髄後根神経節(DRG)神経細胞の軸索ガイダンスを制御する仕組みを解析した。リゾボスファチヂルグルコシド(Lyso-PtdGlc)は、NGF依存性DRG神経細胞(温痛覚を担うTrkA陽性細胞)の軸索を反発するが、NT3依存性DRG神経細胞(固有知覚を担うTrkC陽性細胞)の軸索には影響をおよぼさない。研究代表者らは、Lyso-PtdGlc受容体がGタンパク質共役型受容体(GPCR)であることを証明し、NGF依存性DRG細胞に発現してNT3依存性DRG細胞には発現しないGPCRを網羅的に探索した。約380種類のGPCR遺伝子発現をリアルタイムPCR法により定量し、Lyso-PtdGlc受容体の候補として2種類のGPCR(GPR26とEDG7)を得た。受容体を決定するためには、これらGPCRの発現量を操作したDRG細胞のLyso-PtdGlc応答性を解析する必要がある。よって本年度は、ニワトリ胚DRGへの高効率な遺伝子導入法を確立した。 遺伝子組換え技術によりLyso-PtdGlcに特異的な複数のモノクローナル抗体を作製し、TrkA陽性DRG細胞の軸索ガイダンスを指標にして機能阻害活性を検証し、少なくとも1種類の抗Lyso-PtdGlc機能阻害抗体を得た。動物個体レベルでの神経回路構築におけるLyso-PtdGlcの役割を検証するため、ニワトリ胚の髄腔内への抗体注入実験を開始した。抗体の至適注入時期および至適注入量を決定し、その後の神経回路の形態解析法を最適化した。これまでの抗体注入実験で(例数は少ない)、TrkA陽性DRG軸索が脊髄のPtdGlc陽性領域に進入するという異常を発見した。次年度以降も本実験を継続して、脊髄感覚神経回路におけるLyso-PtdGlcの機能を明らかにしていく。
|
Research Products
(1 results)