2010 Fiscal Year Annual Research Report
脂質が媒介する細胞間情報伝達に着目した神経回路の発生再生機構の研究
Project/Area Number |
21200009
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 裕之 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, チームリーダー (10233933)
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Keywords | 脊髄 / 後根神経節 / 感覚神経 / 軸索ガイダンス / リゾリン脂質 / カルシウムイオン / 成長円錐 |
Research Abstract |
脊髄後根神経節(DRG)を実験対象として、リゾリン脂質による軸索ガイダンスの機能的意義および分子メカニズムの研究を継続した。リゾホスファチヂルグルコシド(Lyso-PtdGlc)は、温痛覚を担うDRG神経細胞(TrkA陽性細胞)の軸索を反発するが、固有知覚を担うDRG神経細胞(TrkC陽性細胞)の軸索走行には影響しない。TrkA陽性DRG軸索への反発ガイダンス活性を阻害する抗Lyso-PtdGlc抗体をニワトリ胚の髄腔内へ注入し、脊髄感覚神経回路の形態学的解析を行った。対照群では、DRG神経細胞から伸びる軸索の走行異常は確認されなかった。抗体注入群では、TrkC陽性軸索は正常の走行パターンを示したが、TrkA陽性軸索にはガイダンス異常が検出された。TrkA陽性軸索は、本来はTrkC陽性軸索が走行するLyso-PtdGlc陽性の脊髄背側部白質へ進入していた。このように、脊髄背側部白質のグリア細胞が産生・放出するLyso-PtdGlcが、異種の感覚を担う神経軸索を異なる領域へ投射させる働きを担うことが判明した。 また、Lyso-PtdGlcがTrkA陽性軸索を反発するための細胞内メカニズムを研究した。Lyso-PtdGlcの反発活性は成長円錐細胞質のカルシウムイオン(Ca^<2+>)シグナルを必要とすることが判明した。さらに詳細な薬理学的阻害実験を行い、細胞内Ca^<2+>ストア(小胞体)からのCa^<2+>放出は重要ではなく、Cd^<2+>依存性チャンネルを介した細胞外からのCa^<2+>流入がLyso-PtdGlcによる反発性ガイダンスに必須であることを明らかにした。このようなCa^<2+>流入が軸索を反発するメカニズムも解明し、論文に発表した。
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Research Products
(3 results)