2011 Fiscal Year Annual Research Report
光感受性分子の遺伝子導入による新たな視覚系構築と再生医工学研究領域の創成
Project/Area Number |
21200022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉井 信 東北大学, 大学院・医学系研究科, 名誉教授 (90004720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 一之 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30203326)
菅野 江里子 東北大学, 国際高等研究機構, 助教 (70375210)
砂金 ひとみ 東北大学, 国際高等研究機構, 技術補佐員 (30400451)
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Keywords | チャネルロドプシン / 網膜 / 視覚野 / 網膜色素変性症 / 神経節細胞 / アデノ随伴ウイルスベクター / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
緑藻類より単離されたチャネルロドプシン-2(ChR2)は「光受容体+陽イオンチャネル」という特性から、神経細胞に発現させた場合、単一の分子の働きで光情報を電気信号に変換することができる。我々はこのChR2遺伝子を用いた視覚再生に取り組み、遺伝盲ラットの光応答を可能にし、また、その方法の問題点などを報告している。本研究では、新たに開発した光感受能及び感受波長域を改善したチャネルロドプシン遺伝子を、アデノ随伴ウイルスベクター組み込み、遺伝子導入を行い、波長感受性拡大の可能性および遺伝子導入よって得られる視覚がどのような特性を持つかを明らかにすることを目的とする。新たに開発したmVChR1遺伝子をHEK細胞に導入し、恒常的にmVChR1遺伝子を発現する細胞株を樹立した。パッチクランプ法によりこの細胞株の光に対する反応を調べた結果、450nmから600nmの幅広い光に応答することが判明した。遺伝盲ラットの網膜神経節細胞にアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、mVChR1を導入し、視覚誘発電位を測定することにより、波長感受性を調べたところ、パッチクランプで得られた結果と同様に幅広い波長光に応答できることが明らかとなった。また、明暗ボックスを用いて遺伝子導入ラットの活動性を調べた結果、クラミドモナス由来のChR2(青感受性)を導入したラットに比べ、mVChR1を導入したラットでは白色光下での活動量が高いことが示され、行動学的にも幅広い波長の光を認知できることが明らかとなった。また、片眼に遺伝子導入を行い、明所での飼育後、還流固定し、視覚野の活動を初期応答遺伝子c-fosの免疫反応性を指標に調べたところ、c-fos免疫反応性の亢進が見られ、眼球から得られた情報が視覚野で情報処理されていることが間接的に示された。 以上のように、視細胞が変性し失明した網膜に光活性化イオンチャネル遺伝子を導入することにより、網膜で光を受け取り、視覚野に情報を伝達できることが判明した。
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Research Products
(4 results)