2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉛同位体比を用いた東アジア世界における金属の流通に関する歴史的研究
Project/Area Number |
21200028
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
平尾 良光 Beppu University, 文学部, 教授 (40082812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯沼 賢司 別府大学, 文学部, 教授 (20176051)
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Keywords | 鉛同位体比 / 金属 / 交易 / 南蛮貿易 / 分析歴史学 / N領域 / 石見銀山 / 経筒 |
Research Abstract |
日本の10~17世紀に亘る金属の流通という問題に関して、まず16~17世紀の南蛮貿易を主体として取り上げた。この問題に対処するために、大航海時代の東洋における貿易拠点であったタイ国の現地調査を行った。現地ではタイ国南部にあるスズ鉱山を調査した。さらに、タイ国鉱山資源のWaiyapot Worakanok 博士を訪問し、タイ国における銅、スズ、鉛資源に関する実態の情報を得た。また、アユタヤ王朝時代の出土遺物を博物館などで実地調査した。鉱山を訪問した際に、実際の鉱石資料に銅、スズ、鉛がどれだけ含まれているかをハンディな蛍光X線分析装置(今回の科研費で購入)を以て、野外で調査できたことは非常に有意義であった。Worakanok博士から、タイ国には東南アジア随一というソントー銅・鉛鉱山があると伺った。他にも鉛鉱山はタイ国内にあるが、歴史時代にも利用されたとなれば、この時期に日本へ入ってきた鉛材料(N領域の鉛)はこのソントー鉱山産の鉛である可能性が高いという。そこで、この鉱山から鉛鉱石を標本として貰い請け、鉛同位体比を調査中である。これらの調査と共に、アユタヤ時代の銀および鉛製品の鉛同位体比を調査するために、各種資料を入手した。これは日本から当時、銀が輸出されていることが反映されているかも知れないことを確認するためである。 日本の10~14世紀の資料として、西日本に広がる梵鐘おび経筒を取り上げた。これら資料に関してそれらの分布および実資料を調査した。この中で幾つかの資料に関して、鉛同位体比測定用の資料を得ている。これら資料は鎌倉時代・室町時代に中国あるいは日本材料がどの程度利用されているかを得らかにする実証となろう。日本における銀の精錬に関しては石見銀山と連絡をとり、現地へ赴き、精錬材料に関して試料を採取し、化学組成と鉛同位体比の測定を進めている。
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