2010 Fiscal Year Annual Research Report
氷表面反応の科学:原子トンネル反応と同位体分別機構
Project/Area Number |
21200048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
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Keywords | 氷表面反応 / トンネル反応 / 星間塵 / 同位体分別 |
Research Abstract |
本年度は,研究課題の主要な目的のひとつである,低温(アモルファス)氷表面での水素原子拡散の同位体効果および,水素原子再結合反応により生成した水素分子の原子核スピン温度の測定を行った.氷表面に存在する(重)水素原子をレーザー誘起脱離させたのちREMPI法により直接検出し,その強度の時間減衰(再結合による水素分子生成により引き起こされる)から表面拡散の情報の得た.その結果,表面温度8Kでは水素と重水素原子の間で拡散の速さに大きな違いは見られず,拡散はトンネル効果によるものではなく,アレニウス的なものであることが示唆された.このことは,表面再結合による水素分子の生成速度には同位体効果がほとんど現れないであろうことを意味する.再結合により生成した水素分子のスピン温度を測定したところ,およそ200K以上を示す高温平衡値3に近いことがわかった.また,生成した水素分子はアモルファス氷表面で再トラップされた後に,スピン温度が時間とともに下がる(オルソ→パラ転換する)事がわかった.この結果は,星間水素分子のスピン温度が温度領域により異なるという天文観値をうまく説明することができる.有機分子CH_3NH_2(メチルアミン)に関して,氷表面原子トンネル反応による重水素濃集が起こるか予備実験を行ったところ,HがDに置換する反応だけではなく,その逆のDがH置換するプロセスも進むことが分かった.
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Research Products
(37 results)