Research Abstract |
本研究は,小型で安価なマイクロチップ用蛍光検出システムを開発することを目的として,真空蒸着法やインクジェット法などの安価なプロセスによってガラスやプラスチック基板上に容易に作製できる有機ELデバイスと有機フォトダイオード(OPD)を用いる新規マイクロチップ用蛍光検出システムを開発するものである。 本年度は,CD型マイクロチップとその回転装置を開発し,チップ上のリザーバーからの溶液の流れとチップの回転速度の関係について検討した。また,熱流体解析ソフトウェアFLUENT6.2を用いて,シミュレーションによる理論的検討もあわせて行った。これにより,リザーバーに入れる溶液量とチップの回転速度を変化させることにより,CD上の異なる位置に配置した別々のリザーバーから溶液を順番に送液できることを理論と実験の両面から明らかにすることができた。 次に,開発したシステムによるイムノアッセイについて検討した。CD型マイクロチップの検出チャンバー内にIgA抗体を固定化し,BSAによるブロッキングを行った後,チップ上のリザーバー中に入れたIgA,HRP標識二次抗体,洗浄溶液および過酸化水素を含むAmplex Red溶液を,チップの回転による遠心力を利用して順次検出チャンバーに導入し,生成したレゾルフィンの蛍光強度を本研究で開発した小型蛍光検出システムにより測定した。その結果,蛍光強度はIgA濃度の増加に比例して増加し,225ng/mL以上で一定となる検量線が得られた。さらに,本法を唾液中のIgAの測定に適用したところ,本法で得られた定量値と96穴マイクロプレートを用いる従来法で得られた定量値は良い一致を示し,本システムをイムノアッセイに適用できることが確かめられた。 本システムはポンプやバルブ,レーザーや顕微鏡などの大型周辺機器が不要で,システム全体を小型化することが可能なので,オンサイトでの環境計測やベッドサイドでの医療検査に極めて有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機ELおよび有機フォトダイオードを用いる小型蛍光検出システムの開発に成功した。また,CD型マイクロチップとその回転装置を開発し,チップの回転による遠心力を利用して送液を行うポンプレス・バルブレスの送液を実現した。さらに,これらを組み合わせた小型のマイクロ化学分析システムを開発し,開発したシステムによるイムノアッセイに成功した。このように,本研究は当初の研究計画通りに達成できた。
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