2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ複核金属錯体を触媒として用いる二酸化炭素の資源化
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21200057
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
永田 央 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 准教授 (40231485)
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Keywords | 脱化石燃料 / 二酸化炭素削減 / 炭素循環 / 光合成 |
Research Abstract |
(1)新しい複核錯体の構成モチーフとして、N4架橋配位子とターピリジンから成る三成分結合型配位子を開発し、コバルト・ニッケル錯体の合成に成功した。架橋配位子としては、N-N結合を介して2つの金属を架橋できるジピリジルピリダジン、ジピリジルトリアゾールの誘導体を採用した。N-N部分が前者では6員環、後者では5員環に属しており、このために金属間距離が異なっている。実際、X線構造解析の結果から、前者の方が短い金属間距離を持つことがわかった。その結果、前者ではヒドロキシド・塩化物など1つの原子が2つの金属を架橋する構造をとるのに対して、後者ではアセテートなどの2座配位子が2つの金属を架橋することができる。この違いは反応性に顕著に現れる。すなわち、前者では酸の添加により一方の金属が脱離して単核構造を容易に与えるのに対し、後者ではそのような変化は起こらない。逆に、後者では2つの金属の協同作用による電気化学的酸化反応が観測されるのに対し、前者ではそのような反応は起こらない。さらに、二酸化炭素存在下での電気化学還元では、後者の錯体でのみ顕著な還元電流が観測された。この結果は、二酸化炭素の電解還元において複数の金属が適切な位置に固定されることが重要であることを示しており、意義ある成果と言える。 (2)金属フタロシアニンを用いた光反応により、チオールを電子供与体とするキノンからヒドロキノンの生成に成功した。チオール・ヒドロキノンはいずれも二酸化炭素と強い親和性を持つことが知られているため、二酸化炭素の光還元に活用できる有用な反応である。 (3)金属ポルフィリンの上方にジアミンを結合した化合物の合成に成功した。この化合物は、異種金属を適切な距離で固定できる構造を持っており、二酸化炭素の電解還元に有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素の電解還元のために有望な新規錯体をいくつか開発することができた。また、新しい光反応も開拓できた。これらの成果により、新しいタイプの二酸化炭素還元研究を展開するための基礎は十分に固めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今期で終了するため、今後の研究への展望を簡単に述べる。まず、二酸化炭素の資源化にとって重要なステップとして、炭素・炭素結合の生成がある。これについては、平成22年度に達成したコバルト錯体によるハロゲン化炭素の光還元反応で炭素・炭素結合の生成が観測されていたので、この反応をモデルとして二酸化炭素の還元による炭素・炭素結合の生成に取り組みたい。また、今期に達成したチオールの還元によるヒドロキノン生成は二酸化炭素の濃縮と深い関わりがあるため、低濃度の二酸化炭素を捕捉して還元反応に供する反応系へと展開したい。
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